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女性美容師の働き方を考える VOL.2/池上真弓(by emt)

細やかな気配り感性豊かなヘアデザインは女性美容師ならではの魅力。

日本の高齢化によりさらに増えるミセス世代のニーズを考えても、共感力の高い女性美容師が活躍できる優位性は変わらないでしょう。

しかし、女性にはライフスタイルの変化という大きな壁があります。

仕事を頑張りたいと思う一方で、プライベートとの両立を考えると将来に不安を感じている女性美容師も多いのではないでしょうか?

シリーズ第2回に登場するのは、大阪と東京に計6店舗の女性優先サロンを展開するby emt®グループのマネージャーを務める池上真弓さん。

女性美容師の働き方の壁にぶつかり、一度はハサミを置くことも考えた池上さんの美容師半生を伺いました。

美容師人生を襲った2度の病

ーー美容師になった経緯を教えてもらえますか?

ずっと美容師への憧れはあったのですが、高校卒業後は両親の反対もあって一般企業に就職し、2年間、経理・総務の仕事をしていたんです。ただ、どうしても美容師の夢をあきらめきれず、両親を説得して美容学校に入学しました。だから私は他の人より遠回りしていて、卒業したのは23歳のときです。

最初に就職したのは大阪・兵庫で多店舗展開する大型サロンです。ただ、入社して間もなく原因不明の体調不良に襲われるようになりました。病院で調べてみたら脳腫瘍とのこと。1年と経たずに退社することになりました。

ーーその後はどうしたんですか?

手術後、薬で治療しながら経過を見るという状況だったので、スタッフ4名の個人店に転職しました。そのお店でようやく美容師としてスタートした感じですね。間もなくスタイリストデビューして、26歳のときには、2店舗目を出店して店長を務めることになりました。ちなみにこの新店の設計を担当していたのが、村井(孝行社長)です。それから時折連絡を取るようになりましたね。

仕事自体は順調だったのですが、28歳のときに今度は卵巣の病気にかかってしまいました。オーナーには「パートで働けませんか?」と打診したのですが、個人店ではそんな余裕があるはずもなく、結局辞めることになりました。

業務委託サロンで受けた衝撃

ーー病気は自分の意思ではないから歯がゆいですよね

なので、今度は働き方に融通の効く業務委託サロンに入りました。その時は衝撃でしたね。2007年当時は業務委託サロンが出始めた頃だったので、今よりも「接客しない」「教育がない」「アシスタントがいない」が当たり前。ただ、ありがたいことにお客さまはついてきてくれたので、指名売上で50~60万円はつくれました。

結婚したのは翌年、30歳のときです。さらに翌年長男を出産したのですが、お客さまを引き継げる環境ではなかったので産後2カ月で現場復帰しました。当時は主人が休みの日に予約を集中させたりして、何とかやっていた感じですね。

ーー業務委託サロンにはしばらくいたのですか?

業務委託サロンで働いたのは3年間ですね。2010年に同店の知り合いが出店するというので、パートとして週2~3日働くことにしました。ただそれだけだと収入が足りないので、ちょうどコルモグループ(※)を立ち上げた村井に以前から誘われていた事務職として週3日働くようになりました。

※by emtを事業展開するグループ会社。美容業に特化した店舗デザイン・施工を中心にブランディングツール制作・備品販売、サロンプロデュースまで幅広く行う

一一ようやく最初の就職先の経験が活きましたね

そうなのですが、当時は育児中心の生活です。パートで働いていたサロンは、最初の条件として子供が急病のときは休んでいいという話でしたが、ただ実際働いてみるとそうでもなく、子供が熱を出して休んだりするたびに肩身の狭い思いをするようになってきました。

自分だけのことだったらいいんですけど、自分の働き方が周りに迷惑をかけることに限界を感じたんでしょうね。事務職でお世話になっていた村井に「ハサミを置くか悩んでいて、ここで週5日事務一本で働けませんか?」と相談したんです。

一一村井社長はどう答えたんですか?

村井からの返答は意外なものでした。「だったらそういう人が働ける美容室をつくろうよ」って。それが2013年春のことです。

私は正式にコルモグループに入社して、美容室オープンまでの半年間、ミーティングをひたすら重ねていくことになるのです。

4つの「ない」を解決するために

ーー最初から女性優先サロンはイメージしていたのですか?

まず、“私が直面した問題をどう解決していくか?”というのが大きなテーマでした。①日曜日、祝日に働けない②夕方には帰らないといけない③急に休まないといけない④レッスンを見られないなど、4つの「ない」を解決すべく色々なパターンを探っていきました。

来店周期の短い男性客をターゲットにする案もありましたが、日祝休みだと来れないからダメだよねとか。だったら平日の昼間に来れる人ってどういう人か? 来店周期を短くするにはどうすればいいか? その人たちにとって居心地のいい空間とは? と考えていき、「世帯年収600万円以上、35~45歳の子育て世代の専業主婦をターゲットにした女性優先サロンという輪郭が決まってきました。

店頭にはベビーキャリア付きの自転車が目立つ

一一お店づくりでこだわったポイントはありますか?

女性優先サロンということで、スタッフが全員女性なのはもちろん、ベビーベッドを入れた個室をつくったり、キッズスペースを備えたり、小さなお子さまと一緒に来やすい空間にしました。あとは使用するシャンプーも産前産後の肌を考え、低刺激なものを選んでいます。

地肌にやさしい低刺激なシャンプー、トリートメント

ーー料金設定はどのように決めたのですか?

カラー料金は近隣の競合店よりも安い3900円に設定しました。リタッチでも全頭でもロングでも料金は同じという明朗会計は村井のこだわりです。カラーで気軽に来ていただける関係性をつくりながら、トリートメントやスパで付加価値をつけていくのが基本の考え方で、カラー以外のメニューは1分100円以上に設定しています。

ターゲットとなる専業主婦が使える金額が8000円と想定していたので、今の客単価7500円というのはちょうど狙い通りになりました。

オープン直後から電話が鳴りっぱなし

一一新規集客はどのように行なったんですか?

1店舗目は大阪の阿倍野区で2014年3月にオープンしました。立地上、クーポンサイトを活用しても費用対効果が合わないと思い、チラシを使った自力集客に絞りました。子育て世代の専業主婦にターゲットを絞った地域密着店ということもあり、おかげさまでオープン直後から電話が鳴りっぱなし。忙しかったけど本当にうれしかったですね。

ーーオープニングは何名でスタートしたのですか?

業務委託で一緒だった女性に声を掛け、あとは「女性限定、スタイリストのみ、時短可、時間外レッスンなし」という求人募集をかけ、私を含めて4名でスタートしました。実際に募集してみると、ママ美容師というわけではなく、教育サロンでレッスンなどの時間外業務に疲れている女性か、業務委託サロンで会保険がなくて不安定と感じている女性のどちらかが多かったですね。

一一オープンした後は順調でしたか?

集客自体は順調だったのですが、最初の1年は20時まで営業していて、18時に帰る人と20時に帰る人の間でいざこざが生じるようになってしまいました。

試算上では売り上げの30%を18時以降のお客さまで占めていたのですが、思い切って18時までの営業に変更することにしたんです。だけど、いざ営業時間を変えてみたら、売り上げ減は10%程度。時間を合わせて来てくださるお客さまが多かったのでしょうね。逆に予約がグッと詰まるようになり、タイムパフォーマンスが上がるきっかけになりました。

平日の営業時間は9:30〜18:00

次回予約率70%、有休取得率100%

ーー有休取得率100%というのは本当ですか?

有休は2カ月前に決めて、強制的に取ってもらっているので取得率は100%です。次回予約率が70%と高く、先の売り上げの見通しが立てやすいというのもあると思いますが、同時にうちで大切にしているのが“全員接客”です。指名売上に対する評価をなくし、お店にお客さまが付くようにしているのでスタッフの代替がしやすくなり、それもあって有休取得率が高いのだと思います。

ーー池上さんは現在マネージャーですが、現場はどの程度出ているんですか?

36歳で長女を出産して、育休を経て復帰したタイミングでマネージャーになったのですが、現場感覚を忘れたくないので、店舗を分散しながら週3~4日は今も現場に立っていますね。

サロン事業部の会議は2つあって、村井が毎月末に店長ミーティングで数字のことを話します。もう1つは私が隔月で各店の現状の課題や業務面のフォローなど、数字以外の部分でコミュニケーションを取る通称・池上ミーティング。この2つの会議で数字目標と組織が上手く回るようにサポートしています。

ーー最後に池上さんの今後の目標を教えてください

働き方のバリエーションであったり、店長以外の役職づくりだったりと、やるべきことはたくさんありますが、色々と美容室を転々としてきた私の根底にあるのは“スタッフが長く働ける環境づくり”です。そういう意味ではいつか退職金制度は整えたいですね。大阪で10店舗出店してからと村井から言われているので、今はそこに向かって邁進するのみです!

 

いけがみまゆみ/1978年12月10日、大阪府大阪市生まれ。高校卒業後、一般企業の総務・経理職を経て、グラムール美容専門学校に入学。卒業後、大阪市内で数店舗を経て2013年にコルモグループに入社。2014年3月に同社初の美容室・emtオープンに尽力。現在、女性優先サロンというコンセプトで大阪市内で5店舗展開。2019年10月に東京都世田谷区に6店舗目を出店、来年3月には大阪市内で7店舗目の出店を予定している。

 

わたなべ

AUTHOR /わたなべ

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