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女性8割の業界が考える「がん」のこと
「フェムテック」市場が徐々に盛り上がってきていますね!!
フェムテック(Femtech)とは、「Female(女性)」+「Technology(技術)」を足した言葉で、女性のライフステージごとの健康課題を技術によって解決できる製品やサービスのこと。
この市場動向の背景にあるのは、世界的に広まっているSDGsに対する取り組みの重要性と、コロナによってもたらされた「健康意識」の高まりがあるとされています。
つまり、いま「健康」こそが人類最大の関心事と言っても過言ではありません!!!!
そんな中で、日本人が特に健康と切っても切り離せないのが「がん」。
日本人の2人に1人ががんになると言われる中、特に女性比率の高い美容業界では女性特有のがんについての意識も高めておかなければなりません。
今回はそんな「がん」についてのあれこれを、『公益財団法人日本対がん協会』の広報の方にオンラインで取材をしました。
2人に1人が罹るのに検診受診率は5割も満たない
日本人が一生のうちにがんと診断される割合は
男性 65.5% (約2人に1人)
女性 51.2%(約2人に1人)
とされています。(『全国がん登録罹患データ』(2019年)に基づく)
男女ともに2人に1人が罹る、“国民病”と言われている「がん」ですが、女性特有のがん検診の受診率はどのように推移しているのでしょうか?
出典:『国民生活基礎調査』2019年(厚生労働省)
徐々に右肩上がりで受診率は上がってきているものの、女性のうち2人に1人は受診できていない計算になります。
また、1985年以降の各がん患者の推移のグラフがこちら。
部位別(主要部位)がん年齢調整罹患率年次推移(1985~2015年)
【調査方法】地域がん登録データのうち、長期的に精度が高く安定している山形、福井、長崎の3県の罹患実測値を基に、人口10万人あたりの年齢調整罹患率を推計した。
出典:全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ)
他のガンの罹患率は安定的に推移しているのに対し、乳房のがんに関しては右肩上がりを続けており、今後も注目しなければいけない数字です。
上記のことから読み解けるのは、がんに罹患するリスクは高まってきているのに対し、検診受診率の伸びが今ひとつ・・・という点。
ステージ初期の段階であれば日帰りの手術で済んだり、早期発見早期治療ができれば以前と変わらない生活を送ることもできるなど、昔のイメージである「不治の病」ではなくなっているがん。となるとやはり、こまめな検診や、自分での意識づけが重要だと言えます。
がん検診啓蒙の立場から伝えたいこと
前置きが長くなりましたが・・
女性が長く美容の現場で活躍していくためにも、がん検診の受診率の向上はメリットしかありません。
古くは1958年からがん予防・検診を促す活動や、がん家族の支援などを行なっておられる「公益財団法人日本対がん協会」広報チームにオンラインでコメントをいただきました。
この対策型の多くは40歳以上が対象で、20~30代も対象になるのは子宮頸がん検診だけです。国はがん検診を受ける人の身体的負担などのデメリットと、早期がんの発見や国民の死亡率低減などのメリットを比較検討し、対象年齢や検査方法を判断しています。そのため、特に20~30代の乳がん検診の受診率が低いのは仕方ないことと思います。
ただ、日本人女性の場合、一生のうちで9人に1人が乳がんになると言われています。20年前は30人に1人と言われていたことを考えると、日本人の乳がんは増えていると言えます。20代で乳がんと診断される人も少なくありません。そのため、20~30代の女性に対し、国や日本乳癌学会などは、日ごろから自分の乳房に関心を持つ生活習慣「ブレスト・アウェアネス」を推奨しています。月1回程度のセルフチェックで普段の乳房の状態を知っておき、気になることがあれば自分で判断せず、医師に相談します。そのうえで、40歳になったら定期的に対策型の乳がん検診を受けるよう呼びかけています。
もちろん、定期的な検診も重要です。
ですが、乳がん発症の要因の一つで日本人女性に多い高濃度乳房の場合、マンモグラフィ検査では乳がんが見つかりにくいとの報告があります。また、高濃度乳房は特に若い世代に多いとされています。エコー検査は高濃度乳房の影響を受けにくい検査方法のため、年齢や妊娠中かどうかなどに合わせて適切な検査方法を選んでみてください。
セルフチェックの方法はこちらのリンクから!(ピンクリボンセミナー)
動画で紹介されています。
その理由としては、「時間がない」「健康に自信があり、必要性を感じない」「心配なときはいつでも医療機関を受診できる」(『がんに関する世論調査』内閣府/2016年)という理由が挙げられます。
一般的に、若いと「がんの進行が速い」というイメージがな〜んとなくあるんですが、それって本当ですか?
がんの種類や発見時のステージ(進行度合い)によって治療後の生存率は変わってきます。がん医療は年々進んでおり、体力がある若い世代の場合、中高年の世代と比べて、治療法の選択肢は幅広いと言えます。乳がんについてはステージⅠといった初期段階での発見と適切な治療を受けられれば、ほぼ治ると言われています。そのため、日ごろから乳房の状態に関心を持ち、何か気になることがあれば医師に相談することが大切だと思います。
忙しいとどうしても検診は後回しになってしまう気がするのですが、どうやって意識づけをおこなったらいいのでしょうか・・
経営者や労務担当者が健康経営を心掛け、がんに関する基本的な知識を学ぶ機会を設けたり、がん検診を受けやすく、罹患後も働き続けられる職場環境を整えたりすることが大切です。
最後に、美容を頑張る女性に向けてメッセージをお願いします!
ブレスト・アウェアネスを推奨している「ピンクの日」等ぜひ取り入れて毎月19日にピンクのアクションでご自身の身体や健康への関心を高めるきっかけにしていただければ嬉しいです。また日本対がん協会は、がん検診のデジタル無料クーポンのキャンペーンをおこなっています。こちらもご参照ください。
女性美容師のがん対策はどうしたらよい?
朝から晩まで働き、休日も勉強会や家族の時間に使うなど、日々忙しい美容師さん。
加えて、美容室は男性経営者が圧倒的に多い中で、検診のために休暇をもらったりするのはなんとなく気まずいもの。
せっかく健康診断の制度を導入していても、それが風土として定着しなければ「行きづらさ」は変わりません。どのようなアプローチをしていったら良いのでしょうか?
●女性スタッフを巻き込んで「健診月間」をつくる
女性が大半を占める美容業界だからこそ、若い世代から大人世代までのスタッフみんなに幹部や先輩が積極的に声をかけていく風土づくりをしてみてはいかがでしょうか。
たとえば「この月は順番に検診を受けに行こう」という“健診月間”を決め、カレンダーに書いてみるなど可視化してみるのも一つの手です。
●お客さまを巻き込む
お客さまもまた女性が大半を占める美容室。近隣の病院やお客様の関わる病院などで検査を実施していたり、パンフレットを配るなどしていたらそれを受付やセット面に設置するなど、お客さまの目にも触れるようにすることでサロン一体となって意識が高まっていきそうです。
●ちょっとした不調を相談できるメンター的存在をつくる
近頃は女性の更年期による体調不良によって仕事を休まざるを得ないケースが幅広い業界で散見されるようになってきました。女性は生理や妊娠、産後など、ライフステージの移り変わりとともにホルモンバランスも変化します。プチ不調を早めに察知し、心身ともに働けなくなる手前で気づき合う仕組みづくりは、長く仕事に関わっていく上で大切な風土になっていくはずです。
個々人でできることとしては普段からのこまめなセルフケアや、先ほどのキャンペーンクーポンなどをうまく利用して、まずは行ってみる! ということが大事です。
また、企業としても気軽に検診について会話ができるような風土や、通院が必要な時期や術後の復帰時期の働き方の多様性などを兼ね揃えられると良いですよね。
長く働くことのできる仕事だからこそ、自分自身の体も定期的にメンテをしていきましょう!
今回答えてくれた人
公益財団法人 日本対がん協会
にほんたいがんきょうかい/1958年に設立されて以来、民間の立場から日本のがん予防・検診の推進・患者や家族の支援、正しい知識の普及・啓発などを行ってきた団体。乳がん検診の大切さを訴えるピンクリボンフェスティバル、シンポジウムなどの開催や、医療従事者向けの研修会の開催など、患者・家族・医療者に向けた幅広いサポートも行う。