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多士済々のパラダイムシフト

新しい美容サービス産業のスタンダードづくりを掲げ、全国36サロン(社)が加盟する一般社団法人プログレス(全国美容経営協会/吉村栄義理事長)では7月26日、グランドニッコー東京台場(東京都港区)で「美容経営シンポジウム」を開催した。

当初は昨年3月(延期して今年2月)に開催予定だった本イベント。新型コロナウイルス感染拡大の影響で再延期となり、満を持しての開催となった。
テーマは「パラダイムシフト」。プログレス創業者である吉原直樹氏(株式会社アルテサロンホールディングス創業会長CVO)がファシリテーターを務め、業界を代表する講師3名およびパネルディスカッションに招へいしたゲスト2名の計6名が登壇した。

【開会あいさつ】
冒頭で吉原氏は「雇用も集客も教育もパラダイムシフトが起きている。この変化を認識できないと我々は生き残っていけないのではないか。たとえば髪質改善、業務委託、メンズ需要など新たな価値観が業界に入ってきてグローバルな戦術も求められる今、時代の変化に順応し、変化に負けない価値観で経営していかなければいけない」とイベントの趣旨を語った。

 

ファシリテーターを務めた吉原氏

 

【第1部】
講師:千葉智之氏(株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー アカデミー長)

「ポストコロナの4ポイント」と題し
①美容は人に必要不可欠なもの
②ご近所ライフ充実
③平日利用促進
④顧客接点の進化
を解説。

リクルートビューティ総研が調査した豊富なデータに基づくマーケット分析を始め、同社の美容領域に属するヘア、ネイル、アイ、エステ、リラクの中でコロナの影響を最も受けなかったというヘア領域の強みを訴求した。

 

圧倒的な情報量をもとに知見を披露した千葉氏

 

【第2部】
講師:菅野久幸氏(株式会社MINX worid 取締役 銀座店ディレクター)

今も週5日サロンワークを行いながら、類まれな組織開発思考を武器にMINX(東京・銀座、原宿)を盛り立ててきた同氏は
・これからは支援型リーダーシップと革新型リーダーシップのハイブリッド型が求められる
・新人育成のメンター制度の意義と効果
・デビュー1年で月間売上100万円を達成できる若手スタイリスト育成のノウハウ
・スタッフの価値を高める社内マーケティング(SNS教育、EC売上増大、社内DX推進)
など、組織風土に根ざした数々の仕組み化を明かした。

 

現場発のパラダイムシフトを講演した菅野氏

 

【第3部】
講師:岸井貞志氏(株式会社M.SLASHホールディングス代表取締役)

神奈川県横浜市を本拠に首都圏でトータルビューティサロンを展開する同氏は淡々と、でも情熱的に現状と未来を語った。

「私たちの仕事は理美容業→美容産業→ウエルネス産業と進化していると感じる。ウエルネス産業とは、健康的で前向きで幸福な生き方を支援し人を輝かせる仕事。今後、美容師はそうなるべきではないか。実は昨年、めざしていた株式上場ができなかった。それは現実だったが、だからこそ会社の数字や規模だけを追いかける経営は空しいと感じている。M.SLASH流のあり方とやり方で今後も上場はめざしていく」

「また昨今、奨学金を抱えて入社してくる子が多いので環境改善を目的に美容学校を開校した。行動してみて感じたのは、美容師国家試験を改革できないか。たとえば、1つのメニューだけを習得するコースなら3カ月の学びで卒業できるなど。美容師免許の規制緩和もしていただきたい。働き方だけではなくて、教育も自由化を志向したほうが業界も社会ももっと良くなるはず……」

同社はウエルネス産業の立ち位置で、ライフスタイルコミュニティをビジョンに掲げているとのこと。
そのためには働いている社員の「ウェルビーイング=人の幸福をめざして主体的に行動する」が重要になると説いた。
その実現に向けたキーワードとして、以下の2つを挙げた。
・やってみよう
・なんとかなる

 

強みも弱みも語り、会場の共感を集めた岸井氏

 

【第4部:パネルディスカッション】
吉原氏をファシリテーターに、上記の講師3名にゲスト2名を加えた計6名で未来を語り合った。
・ゲスト:村橋哲矢氏(東京都美容生活衛生同業組合 専務理事)
・ゲスト:村上 要 氏(WWD JAPAN編集長)

さまざまな切り口でQ&Aを行ったが、観客の耳目を最も集めたのは以下のくだり。
吉原「美容師国家試験の実技は考え直しても良いと思っています。村橋さんのお考えは?」
村橋「賛成です。今、美容師養成のあり方を厚生労働省が検討している。具体的にはオールウェーブ実技の有無とまつ毛エクステンション実技の導入をどうするか。前者は令和5年度に方向性を見出す、後者は本年度中に実現の可能性を検討するとなっています。現実的な問題として、国家試験改正には課題が山積しています。それならば業界のコンセンサスを取りながら抜本的な改革を協議し、みんなで変えていくのもありえると考えています」

美容組合の視点で業界の課題を挙げた村橋氏

 

ファッションとヘアの親和性を語った村上氏

 

パネルディスカッションの様子

 

会場には約600名が集まり、コロナ禍で業界最大規模のリアルイベントとなった同シンポジウム。
全国各地の有力サロン経営者、大手メーカー・ディーラーの社長や幹部クラスが顔を揃えた中、たくさんの問題解決と問題提起を行いイベントは盛況裡に幕を閉じた。

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