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ジャズる!? ボブログ音楽食堂Vol.17 Hi-Fi-Setの巻

 

 情報社会に埋もれてしまった名曲/名盤(迷盤!?)のホコリを払って美容師のみなさまに紹介する「ボブログ音楽食堂」。

 

今回から始まるシリーズはずばり!「ジャズ」。実は生粋のアメリカ音楽=JAZZは、クラシック音楽界の偉大な演奏家でさえいつか奏でてみたいと憧れる、とても高次元な音楽フォーマットです。

 

シリーズ企画「ジャズる!? ボブログ音楽食堂」はまず、JAZZに羨望の眼差しを向けるロックンロール、ソウル、ポップス畑のミュージシャンたちが録音したジャズ風の作品=セミ・ジャズ・アルバムからスタート。

 

いきなりガチンコのJAZZはちょっとなぁ…と気後れしている貴方も、ここから入れば安心してジャズれるかも!?

 

 

 

 

[序章]  卒業写真のあのひとが!? 翼を広げてハイ・ファイ・セット!?

 

 

「ジャズる!? ボブログ音楽食堂」セミ・ジャズ・アルバムの第一回目は、日本のボーカル・トリオ=Hi-Fi-Set/ハイ・ファイ・セットから始めたいと思います。

 

はい・ふぁい・せっと!?そんなの知らねーよと言いかけた貴方も、母体となったグループ=赤い鳥の「翼をください」を小・中学校の音楽の授業で一度は歌っています。赤い鳥が解散した1974年に、メンバーだった山本潤子氏・山本俊彦氏・大川茂氏の3人で新たに結成したのがハイ・ファイ・セットです。

 

キャリアの初期にはユーミン(=荒井由実=松任谷由美)の「卒業写真」や、ブラジル人のヒット曲になかにし礼氏が日本語詞をつけた「愛のフィーリング」などの大ヒットを飛ばした彼らがフォーク/ポップスのコーラス・グループで終わらなかったのは、3人に共通していたJAZZのセンスとジャズ特有の複雑な和声をさらりと歌いこなすボーカル・グループとしての実力があったからに他なりません。

 

そんなHi-Fi-Setにぞっこん惚れ込み共作を申し出たのが、ジャズ・ピアニスト/アレンジャー/作曲家の音楽鉄人=佐藤允彦(まさひこ)氏。彼らを「ジャズ・ボーカル・トリオ」として絶妙な火加減で調理し、なんともトレビアンなセミ・ジャズ・アルバムを3枚、なんと3年連続でこしらえます。

 

 

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[第一章] バブルに逆行!? 80年代初頭にセミ・ジャズ・アルバム3部作

 

 

世の中がブクブクとバブり始めた1981年、佐藤允彦氏とハイ・ファイ・セットはセミ・ジャズ・アルバム3部作の1枚目「3NOTES/スリー・ノーツ」を録音します。

 

 

3NOTES / Hi-Fi-Set(1981) ハイ・ファイ・セットの大傑作であるとともに日本のセミ・ジャズ・アルバムの金字塔的作品。2022年6月に奇跡的に再発され現在Amazonでフツーにポチれるが、地味な音楽ゆえ入手できるうちに買ったほうが賢明。

 

 

 

派手な演出は一切なし。ジャズ・コーラスの醍醐味を探求したかのようなアルバムで、三声ハーモニーの全パートはメンバーの山本俊彦氏(2014年に逝去)が編曲しています。特筆したいのは、全曲このアルバム用に書き下ろしたオルジナル曲であること。中でも私が腰を抜かしたのは、オリジナル曲全ての歌詞が「日本語」だったことです。

 

英語の歌詞はほとんどの場合「音符ひとつに一語」でメロディに乗せ易いのですが、日本語の歌詞は基本「音符ひとつに1文字」です。これでジャズのswing感を引き出すのは、ジャズに精通したプロの作曲家・作詞家が数名集まって取り組んだとしてもかなりの難関であることは容易に察しがつきます。

 

そしてこの3NOTES、曲ごとのメロディーや編曲を上回って秀逸なのがその「歌詞」。日本語でジャズを演ったアルバムで、歌詞から伝わるストーリーが曲の骨子になっているのはもう驚異的ですらあります。しかも「粋」で「おしゃれ」で「カッコいい」と三拍子揃っていますから、今後10年経って貴方が大人になっても聴き続けられること間違いなし。音楽好きの貴方はランチを1回我慢してでも入手する価値「大」です。もし貴方の好みに合わなかったとしても、次に貰い受けたお友達は喜んで一生聴き続けることでしょう。

 

最高レベルのプロたちが集まり本気で取り組んだ made in Japanのセミ・ジャズ・アルバム「3NOTES」は、聴く度に誰かに感謝したくなるくらいの傑作であります。

 

 

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[第ニ章]  Hi-Fi-Setが憧れたのは米国のあの3人組か!?

 

 

ハイ・ファイ・セットのセミ・ジャズ・アルバム3部作は最もオーガニックでアコースティックな「3NOTES」に始まり、翌82年には2作目となる「1 & 2」を録音します。

 

 

1 & 2 / Hi-Fi-Set(1982) Hi-Fi-Setの「切れ味」を前面に押し出し、前作よりも広範囲の音楽ファンに向けた第2作目。アコースティックなJAZZ色をあえて薄めに味付けたのは、当時流行の最先端だった米国のウェザーリポート/Weather Reportやブラジルのアジムス/AZYMUTHのクロスオーバー・サウンドを意識したと推察するのは浅はかだろうか!?

 

 

 

前作よりもアコースティック・ジャズ色を控え目にし、代りにシンセサイザーを編曲にちりばめるなど、アルバムのサウンドを意図的に大衆好み(=ポピュラー路線)の味付けに調整したように聴こえます。

 

実はジャズ音楽、直球の「どジャス」であればあるほど商業的に拡販領域が狭くなるという事実があります。たとえばモダン・ジャズ界の帝王:マイルス・デイビス(Miles Davis)のレコードでさえ、3万枚売れればジャズ界ではメガ・ヒット扱いです。

 

AKB48とジャズの「アルバム売り上げ枚数」には、月とすっぽんどころかビル・ゲイツと吉本の新人芸人くらいの差異があることは、ボブログ音楽食堂の読者のみなさんなら知っておいて損のない、音楽業界の事実であります。

 

音楽的には高水準なアルバムでも、セールスが振るわなければ次を作らせて貰えないのは厳しい現実。ゆえにセミ・ジャズ・アルバム3部作で1枚ごとにサウンドを微調整することは、演る側(音楽家)と売る側(レコード会社)の互いの忖度として至極当然といえます。

 

 

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[第三章] 3部作、これで最後よ I miss you……

 

 

Hi-Fi-Setのセミ・ジャズ・アルバム3部作、最後の1枚は1983年に録音された「I miss you / アイ・ミス・ユー」です。私的記述で恐縮ですが、easymanが特に愛聴しているハイ・ファイ・セットのアルバムがこれです。

 

その理由はポップス味とJAZZ味の絶妙なブレンドとバランスで、適した言葉を選ぶなら「いい塩梅(あんばい)」。音楽的傾向は先記の「3NOTES」や「1 & 2」とまったく同じですが、前2作が予想通り~期待以上に売れていなければ、レコード会社がこの3作目の製作にGoを出すはずがありません。彼らのセミ・ジャズ・アルバム3部作は音楽的のみならず、商業的にも成功を収めたのであろうと推察するのであります。

 

 

I miss you / Hi-Fi-Set(1983) 3人のハーモニーまがすます冴え渡るセミ・ジャズ・アルバム3部作の最終作。楽曲の良さも秀でており、歌謡曲領域でのヒットも期待したのでは!?と思うほど。ボーカル・トリオは日本にも腐るほど存在するが、聴く度に新たな感動を覚える山本潤子氏・山本俊彦氏・大川茂氏によるHi-Fi-Setのセミ・ジャズ・アルバム3部作は、日本のポピュラー音楽史に残る偉業と断言したい。

 

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[最終章]  行き先ですか!?  ランバート・ヘンドリックス & ロスです

 

 

長~いコラムもやっと終わりか…と思いきや、結びに米国ジャズ界の「超」が付く人気ボーカル・トリオ=ランバート・ヘンドリックス & ロス / Lambert, Hendricks & Rossについて触れてから終わりますので、もうちょっとだけお付き合いを!

 

先記のハイ・ファイ・セットのセミ・ジャズ・アルバム・プロジェクトには開始前から明確な「指標」として、ランバート・ヘンドリックス & ロスへのオマージュ、直球で申しますと「私たち、こうなりたいよね」という切なる欲求があったのではないか…と、3部作を聴く度に思わされます。

 

私が初めてランバート・ヘンドリックス & ロス(L.H.&R)のアルバム“The Hottest New Group In Jazz(1960)”を聴いたときに感じた「音楽的雰囲気」がHi-Fi-Setのセミ・ジャズ・アルバムを連想させたのがその理由ですが、3部作の特に3NOTES、山本潤子氏がビブラート深くハイ・ノートを歌い上げる箇所はL.H.&Rのアニー・ロスへのオマージュにも聴こえますし、三声ハーモニーにもかかわらずそれぞれが超個性的に歌い上げるところや、ハーモニーをちょっとコミカルに響かせることなども理由に挙げられます。もちろんこれらは私の勝手な推測ですから、ご本人は「違うよ。目指したのはマンハッタン・トランスファーだったのさ」と失笑なさるかも知れません。

 

最後に、このL.H.&Rのジョン・ヘンドリックス氏は、器楽奏者がアドリブで演奏したメロディに英語の歌詞を乗せて豪快に歌いちぎる技=ヴォーカリーズ/vocaleseの大名人であります。

 

The Hottest New Group In Jazz / Lambert, Hendricks & Ross (1960)   ジョン・ヘンドリックス(Jon Hendricks)、Dave Lambert(デイブ・ランバート)、Annie Ross(アニー・ロス)からなるボーカル・トリオで、この3人での活動は1957年から64年まで。ジャズ・ファンのみならず世界中の音楽愛好家~歌手~演奏家から絶大に支持されている。時にコミカルで溌剌としたボーカル・ハーモニは気軽なジャズに聴こえるが、個性が際立つ3人の声でやっていることはほとんど神がかりな領域。難しさを感じさせずにさらりと演ってのけるのは超一流の妙技だ。

 

 

 

ボブログ音楽食堂「バックナンバー」のご案内! 

 

Vol.1「心が洗われるような、いい音楽ありませんか?」は→コチラ

Vol.2「踊るROCKに観るROCK、ちょっぴり大人のAOR」は→コチラ

Vol.3「アラ40/アラ50のお手本としてアニーとクリッシーを拝むべし!」は→コチラ

Vol.4「アラ40アラ50にオススメしたい! 69歳の女性ロック・シンガー、クリッシー・ハインドの傑作スタンダード集」は→コチラ

Vol.5「おうちにいてもワイハでアロハ!!の巻」は→コチラ

Vol.6「違いの分かる女が斬る! J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲のあれこれ!」は→コチラ

Vol.7 「笑い転げて腸捻転!?世界の珍盤/奇盤/迷盤特集」は → コチラ

Vol.8 「唸るオルガン!その名はハモンド!」は → コチラ

Vol.9 「怒涛のハモンドオルガン特集 其の弐」は → コチラ

Vol.10「ビートルズ豪雨後の筍を狩る! 其の壱」は→ コチラ

Vol.11「ビートルズ豪雨後の筍を狩る! 其の弐」は→ コチラ

Vol.12  歌「だけ。」=ア・カペラ は→ コチラ

Vol.13 クリスマスの「隠れた名曲」クリス・レアの巻は → コチラ

Vol.14 「まるごと粋なクリスマス・アルバム特選」は → コチラ

Vol.15 クリスマスの「隠れた名曲」オノ・ヨーコの巻は → コチラ

Vol.16 まるごと粋なクリスマス・アルバム特選 「其の弐」は → コチラ

 

 

 

 

 

easyman

AUTHOR /easyman

ビートルズが来日した年の生まれ。美容師・介護士の免許と実務経験があり、座右の銘は“髪(かみ)のケアから下(しも)のケアまで”。某美容メーカーの教育部門に19年間勤務し、なぜかプロ音楽家との演奏経験あり。一人しかいないのにナンバーワン営業マンと呼ばれる髪書房の特攻隊長。

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