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クリスマスの「隠れ名曲」オノ・ヨーコの巻 ボブログ音楽食堂Vol.15
-序章-
情報社会に埋もれてしまった名曲/名盤(迷盤!?)のホコリを払って美容師のみなさまに紹介する「ボブログ音楽食堂」。Vol.15のテーマは、年に一度世界中がそのムード一色に染まる大イベント「クリスマス」。アルバムの中にひっそりと収録されていたり、メディアで取り上げられることがほぼないクリスマス・ソングの「隠れ名曲」にスポットを当てます。
今回は世界で最も有名な日本人=オノ・ヨーコ(小野洋子/YOKO ONO)氏が、夫ジョン・レノン氏と共同名義で発売したクリスマス・シングル「Happy Christmas (War Is Over)」のB面にひっそりと配したウインター・ソングが登場します。
[第一章] ほら、聞いてごらん、雪が降っているよ
Vol.13で紹介したクリス・レア氏のDriving Home For Christmasは、毎年出回るクリスマス・ソングのコンピレーション・アルバムに収録されていることがありますが、今回紹介するオノ・ヨーコ氏のウインター・ソングは正に「孤高」の一曲。入手は困難ではありませんが、注意して探さないと見過ごしてしまうくらい穏やかな佇まいの曲です。
オノ氏は夫ジョン・レノン氏とJOHN&YOKOの共同名義でシングル盤「Happy Christmas (War Is Over) /ハッピー・クリスマス」を1971年12月にリリースしました。そのB面にひっそりと収録されていたのが今回の主役=「Listen, The Snow Is Falling / ほら、聞いてごらん、雪が降っているよ」です。
A面はいまでこそクリスマス・ソングの鉄板として君臨する大名曲ですが、発売直後は決してハッピーな状況とは言えませんでした。夫婦が居を移したばかりの米国で録音しリリースされたのが1971年12月の初旬。既にクリスマス商戦に乗り遅れたタイミングが災いし、発売後のヒットチャートを賑わすには至りませんでした。また英国ではオノ氏のレコード契約の問題がくすぶり、発売されたのが翌1972年11月24日と、曲名とは裏腹に波乱含みのシングルでした。
[第二章] ほら、聴いてごらん、クリスマスなんてひとことも言っていないよ
古くは1734年にJ.S.バッハが作曲した「クリスマス・オラトリオ」からAKB48の「とっておきのクリスマス」に至るまで、銀河系を彷徨う塵のごとく無数のクリスマス・ソングが排出されてきましたが、このListen, The Snow Is Fallingは民謡の「赤とんぼ」や「小さい秋」に匹敵する日本調の美しい旋律に加え、歌詞が英語にもかかわらず意味が日本語で伝わってくるというとても稀有な”洋楽”ポップ・ソング。冬季限定の音楽として扱うのが勿体ないくらい格別な味わいと存在感があります。
実はこのListen, The Snow Is Falling、曲中にクリスマスという単語は一度も出てこないのですが、雪国育ちなら記憶に焼き付いている “さむ暖か~い” 情景と、一年のこの時季=This Time Of The Yearを連想させてくれる「裏」クリスマス・ソング。これは「私の作品は受け手の想像力と連結して完成する」という、芸術家オノ・ヨーコ氏の一貫した表現哲学なのであります。
[第三章] ほら、聴いてごらん、ウェディング・アルバムにオマケで入っているよ
さて、この世界一無名なクリスマス・ソング、CDではJOHN & YOKO名義の「ウェディング・アルバム/Wedding Album」にボーナス・トラックとして追加収録されており、私は1997年に米Rykodisc(ライコ・ディスク)から再発された盤で聴いています。ちなみにこのアルバムが1969年に発売された時のフォーマットは、もちろんアナログ=LPレコードでした。
[第四章] ほら、聴いてごらん。ハーバード大学出の3人がカバーしているよ
オノ氏の類い稀なるポップ・チューンListen, The Snow Is Fallingは海外のロック・アーティストの琴線にも触れたようで、1987年に米ハーバード大学在学中の男女3人が結成したロック・バンド GALAXIE 500(ギャラクシー・ファイブ・ハンドレッド)が、解散から6年後の1997年に発売したライブ盤 「COPENHAGEN/コペンハーゲン」 の中で痛快かつ見事にカバーしています。
彼らは本国よりも英国で人気があったグループで、つま先を見つめながら欝々と演奏しているかのようなダウナーなサウンドに、高偏差値ならではの知性がじわ~っと滲み出た独特の音楽は、活動期間たった4年だったにも関わらず91年の解散から現在に至るまで世界中に新規フォロワーが後を絶ちません。
ポスト・パンクやニュー・ウェーブで鍛えた耳にも、シューゲイザー/オルタナティブ/ガレージなどちょっとひねくれたロックン・ロールが好きな人たちにも、GALAXIE 500の音楽はおいしいディナーになる可能性「大」。同様に現在も世界中でファン増殖中の我らがロックン・ロール・バンド:少年ナイフ/Shonen Knifeの山野直子氏も、GALAXIE 500の大ファンであることを公言しています。
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Vol.1「心が洗われるような、いい音楽ありませんか?」は→コチラ
Vol.2「踊るROCKに観るROCK、ちょっぴり大人のAOR」は→コチラ
Vol.3「アラ40/アラ50のお手本としてアニーとクリッシーを拝むべし!」は→コチラ
Vol.4「アラ40アラ50にオススメしたい! 69歳の女性ロック・シンガー、クリッシー・ハインドの傑作スタンダード集」は→コチラ
Vol.5「おうちにいてもワイハでアロハ!!の巻」は→コチラ
Vol.6「違いの分かる女が斬る! J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲のあれこれ!」は→コチラ
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Vol.9 「怒涛のハモンドオルガン特集 其の弐」は → コチラ
Vol.10「ビートルズ豪雨後の筍を狩る! 其の壱」は→ コチラ
Vol.11「ビートルズ豪雨後の筍を狩る! 其の弐」は→ コチラ
Vol.12 歌「だけ。」=ア・カペラ は→ コチラ
Vol.13 クリスマスの「隠れた名曲」クリス・レアの巻は → コチラ
Vol.14 「まるごと粋なクリスマス・アルバム特選 小野リサ&ダイアナ・クラール」は → コチラ
AUTHOR /easyman
ビートルズが来日した年の生まれ。美容師・介護士の免許と実務経験があり、座右の銘は“髪(かみ)のケアから下(しも)のケアまで”。某美容メーカーの教育部門に19年間勤務し、なぜかプロ音楽家との演奏経験あり。一人しかいないのにナンバーワン営業マンと呼ばれる髪書房の特攻隊長。