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美容室のサブスク活用方法と実例
身近な存在にある様々なサブスク
休日は家で映画を見てゆっくり1日過ごしている。というように、動画や音楽を配信するサービスを大いに活用している美容師は多いのではないでしょうか。
そこで今回のブログは美容室の定額制サービス、サブスクについて、NEXT LEADER2022年1月号よりリライトしました。
美容室のサブスクに興味はあるけど、なかなか踏み出せない人に是非読んでもらいたいです。
定額制サービス、サブスクは美容室に浸透するのか?
元々回数券やパスポートが普及している美容室も多く、定額制サービス(以下、サブスク)との差別化が難しいと問題視されていが、コロナ禍を機に一転。サブスクを本格的に導入するサロンが増えてきたのが現状。
サブスクに「どんなメリットがあるのか」「メニュー化する際の注意点は」等、成功しているサロンの実例から、サブスクの本質や課題を掘り下げる。
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上のグラフは国内のサブスクサービスの市場規模を表したもの。今年以降は予想値ではあるが、1兆円を超える市場規模になるのは時間の問題。
美容室のサブスクは以前から「MEZON」やブルーバーを持つ店舗などで運用されていたが、コロナ禍における来店周期の延びをきっかけに、通常サロンでも導入を考える会社が増えてきたというのが最近の潮流だ。
元々リピートビジネスであり、回数券や年間パスポートなどが普及している美容室からすると「サブスクを導入する意味はあるのか?」という意見もあるが、サブスクの本質は「継続性と利用者との関係構築」であり、売り切り型のメニューとは一線を画す。
下の画像データをみればわかるように、美容系のサブスクは他のカテゴリーに比べると利用期間が短く、まだまだ成長過程ではあるが、月額利用料では可能性を感じる。では、具体的にどのようなポイントを押さえて導入するべきなのか?次に説明するのは、美容室におけるサブスクのメリットと導入時の注意点を解説する。
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そもそもサブスクリプションとは?
サブスクリプションとは「料金を支払うことで製品やサービスを一定期間利用することができる」ビジネスモデルのこと。元々予約購読や定期購読を指し、日本でも新聞や定期購読の雑誌があったため、決して新しい概念ではない。
近年「所有から利用へ」というシェア型の価値観が浸透してきたことで、さまざまな業態が参入するようになった。
サブスクリプションのサービス利用期間
※3,976人のさうbスクリプションサービス利用ユーザーへのウェブアンケート調査
※ウェブアンケート実施期間:2019年12月9日~16日
※複数選択回答により、割合の合計は100%を越える ICT総研調べ
上のグラフはジャンル別にサブスクサービスの利用期間を示したグラフ。利用期間3年以上は「新聞・ニュース」が7割。「アプリ・ソフトウェア」が約4割。美容領域はファッションが含まれているためか比較的短期間の利用が多く、まずはサービスの継続性に注力すべき段階にあろうと言える。
現在利用しているサブスクリプションサービスの月額利用料
※3,976人のさうbスクリプションサービス利用ユーザーへのウェブアンケート調査
※ウェブアンケート実施期間:2019年12月9日~16日
※複数選択回答により、割合の合計は100%を越える ICT総研調べ
続いてはジャンル別の月額利用料グラフ。数あるジャンルの中で、1万円以上1万円未満も31%と僅差ではあるが、他のジャンルに比べると高価格でも浸透しやすいサービスとして認識されていることがわかる。
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美容室におけるサブスクのメリットと注意点
売り上げの安定だけではないメリットの数々
スタッフの稼働率が上がる
サロンの利用回数が増えることで手持ちの時間が減り、スタッフの稼働率が上がる。もちろんスタッフに負荷がかかりすぎてはいけないが、カットといってもメンテナンスカット、カラーもリタッチカラーが増えるので、技術的な負担は少ない。
個々の集客に向けた負担が減る
サブスクの良さは月額課金が自動更新であること。会員数の推移を注視する必要があるが、これまで個人単位で行ってきた再来DMなど、集客ツール作成の業務負担を減らすことができる。
予約制であればシフトが組みやすくなる
次回予約制のサブスクであれば、来店コントロールしやすくなるため、スタッフのシフトが組みやすくなるというメリットも。実際にアイディール(サブスクを活用しているサロン。後ほど紹介。)では繁忙期が予測できるため、多くのパート美容師が活躍している。
会員の数だけ売り上げが安定する
毎月、安定した売り上げを確保できるのがサブスクの大きなメリット。実際にアイディールでは、緊急事態宣言下でも一定の売り上げが確保できたという。また、美容室にありがちな売り上げの季節変動がなくなるのも大きい。
来店回数の増加で関係性が深まる
サブスクの導入の副産物の1つが、来店回数の増加による信頼関係の深まり。通常2~3カ月に1度の来店だと縮まらない距離感がぐっと縮まり、アシスタントの名前も覚えてもらえるようになったという現場の声も。
新規より既存客に集中できる
来店回数が増えることで、既存客の年間支払額の最大化が見込めるのがサブスクの利点。実際にRITA(サブスクを活用しているサロン。後ほど紹介。)ではサービス導入以降、売り上げが右肩上がり。新規客に追われることがなくなったという。
サブスクの利点といえば「売り上げが安定する」という印象があるかもしれないが、それ以外にもさまざまなメリットがある。
特に注目したいのが、スタッフの働き方の改善。来店回数が増えることでメンテナンス系の技術が多くなり、コミュニケーションに時間が割けるようになったというのが現場のリアルな声だ。
また、チケットや年間パスポートは常に「販売する」必要があるが、サブスクは常に自動更新。キャンペーンごとにDMを送るなど、個々のスタッフの業務負担が軽減できるのは大きい。一方で導入する際にいくつかの注意点がある。
導入する際の注意点
〇最初のサービス設定は重要
一度決めた内容や料金の変更はサービスへの信頼低下を引き起こす
〇消費者視点で料金設定を考える
消費者視点でないと継続的な利用に繋がりにくくなる
繰り返しになるが、サブスクの本質は「継続性と関係性の構築」。これらを踏まえて導入すれば、同業他社との価格競争から抜け出す大きなきっかけになるかもしれない。
続いて、サブスクを導入する際の注意点やポイントを更に深く掘り下げていく。カギは継続性と手軽さにアリ。
導入する際の注意点とポイント
最初のサービス設計は慎重に
サブスクの本質は継続性にあり、一度決めたサービス内容や料金変更は、利用者の信頼を失うことにつながる。どのようなメニューと料金がベストなのか、事前にしっかりとシミュレーションすることが重要だ。
サービス内容は複雑にしないこと
サブスクの本質は継続性にあり、一度決めたサービス内容や料金の変更は、利用者の信頼を失うことにつながる。どのようなメニューと料金がベストなのか、事前にしっかりとシミュレーションすることが重要だ。
会員数が増えた場合の供給力を考える
稼働率が良くなっても、スタッフに負担がかかりすぎてしまっては本末転倒。美容室のサブスクはデジタルサービスではないため、急速に会員数が増えた際にどれだけのサービス量を供給できるかを考えておく必要がある。
LTVは年間支払額で考える
サブスクのKPI(重要業績評価指標)と言われているのがLTV(顧客生涯価値)。長期的な成長を考えるのに欠かせない指標だが、美容室の場合は年間支払額と会員数を軸に考えると事業成長を把握しやすくなる。
消費者目線での料金設定を
サブスクは毎月課金だけに、料金のお得感がないと入会障壁が高くなる。利便性の高いアマゾンプライムでも月額料金は500円。どのくらいの料金であれば利用したくなるのか、あくまでも消費者目線で考えるのが大切だ。
回数券、年間パスポートとの差別化が必要
美容室にサブスクが浸透しない理由の1つに、回数券や年間パスポートといった類似のサービスがあることが挙げられている。サブスクの回数券の本質は異なるが、利用者にはわかりづらいため、独自のメリットを訴求する必要がある。
入退会の手続きはできるだけ簡単に
サブスク=囲い込みという発想は禁物。成功するサービスを見てもわかるように、入退会の手続きはボタン1つで完了くらいのスムーズさが求められる。簡単に退会できたという信頼感は、再入会する心理的なきっかけに。
撤退するサービスもあることを忘れずに
市場規模が広がりつつあるサブスクだが、AOKIホールディングスのスーツレンタルサービスが撤退したように、サブスク市場の一部に頭打ち感が出ているのも事実。こうした状況を踏まえつつ、リスクのない導入を心がけよう。
以下からはサブスクを実際に導入し、試行錯誤しながらも成功へと導いたサロンの例に挙げ紹介していく。
大阪 :idealの場合【実現したのは指名客に追われない働き方 ~顧客ニーズを叶えつつ、働き方を変える~】
会社データ :ideal (大阪府大阪市)
会社名:株式会社ideal
代表:北村由華
創業:2018年
店舗数:2店舗
スタッフ数:12名(パート4名含む)
サブスクの主な内容
・月額会費は8,000円~
・コースによっては毎週利用可能
・主力3コースは指名なし
大阪の中心地で2店舗展開するアイディールはオープン時から「月額定額制」を本格的に打ち出しているサロンだ。北村由華代表がサブスク導入した理由を語る。
もう1つの理由は指名客に追われてどうしても長くなりがちな美容師の労働時間をどうにかしたいという思いがありました。
月額定額制であれば、どちらの課題も解決できると考えたのがきっかけです。
北村代表はノートを何冊も使って、施術内容と時間をシミュレーションした。オープン直後はなかなか浸透しなかったものの、テレビ取材をきっかけに会員数は200名まで急伸。昨春のコロナ禍で減ったものの、会員数は安定している。
一方で課題もあった。最大4回再来店できるシステムを無理にでも活用しようとする会員がいて、スタッフの稼働率が想定以上に上がってしまったのだ。今年の10月、新店舗出店のタイミングもあり、利用規約と料金を改定。会員数の減少もあったが、今は理想的な状態だという。
また、カットといってもメンテナンスカットが多いので入客のハードルが低く、スタッフ間で技術共有できるのがメリットです。
※主力の3コースとは、NEXT LEADER1月号にて細かく紹介 購入はコチラ
1人の個客を全員でシェアする仕組みは働きやすさにもつながっており、パートも含めてママ美容師が多いのもうなずける。
指名客に追われずに顧客との信頼関係を築く新たな働き方はサブスクだからこそ実現できたのかもしれない。
東京 FRANK’S BARBAR 日比谷店の場合【通いたくなる仕組みで美容室をサードプレイスに~ターゲットのウォンツとメニューが一致~】
会社データ FRANK’S BARBAR 日比谷店(東京都千代田区)
会社名:arcami株式会社
代表:源真
創業:2006年
店舗数:8店舗
スタッフ数:40名
サブスクの主な内容
・こだわりのビールやドリンクを楽しめる
・カット通い放題を軸にメニューを開発
・男性専門美容室
男性専門美容室のフランクスバーバー日比谷店がサブスクを導入したのは昨年12月。ビールをウリにしたサブスクを思いつきブランドを練っていた結果、現在のカットを軸にしたパターンに落ち着いた。好立地も奏功し、総客数の約半数をサブスク客が占めている。プランニングと平行して行われたのが専用アプリの開発だ。
そう語るのはサブスクをプランニングしてきた柿坂宗一郎支店長。サブスクにより、在宅勤務が増えた状況においても安定した売り上げを確保することができた。
サブスクが評判を呼び、紹介も多いという同店。仕事帰りにビールを飲みながらカットするという新しい習慣が広まりつつある。都内2店舗目となる人形町店ではコワーキングスペースを設け「カットしなくても行きたくなる」ブランディングが確立されている。
もともとまめにカットする男性専用の美容室だったことや便利な立地も同店のサブスク成功の大きな要因だろう。しかし、ターゲットや立地を分析しお客さまにとって定額制で通いたくなるようなメニューやプランをつくり上げるプロセスは美容室でも参考になるはずだ。
いかがでしたでしょうか。
このブログの記事は NEXT LEADER1月号「サブスクの可能性」の記事の一部をリライトしたものです。
各店舗におけるサブスクの詳しいメニュー内容や、サブスクをどのように浸透させたのか等をより詳しく載っています。
是非ご覧ください。購入はコチラ
北村由華
きたむらゆか◎1981年12月17日、栃木県生まれ。東京美容専門学校卒業後、都内2店舗勤務後、プライベートサロンを創業。結婚、出産後はフリーランスに。夫の転勤を機に2018年に大阪に転居。同年12月に:idealをオープン。2021年10月、2店舗目になる心斎橋店を出店した。
柿坂宗一郎
かきさかそういちろう◎1987年10月22日、熊本県生まれ。西日本ヘアメイクカレッジ卒業。2016年arcami株式会社入社。エリアマネージャーとして東京進出をリードし、2019年日比谷店、2020年人形町店をオープン。
AUTHOR /sae
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