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ビートルズ豪雨後の筍を狩る! ボブログ音楽食堂Vol.10
情報社会に埋もれてしまった名曲/名盤のホコリを払って美容師のみなさまにご紹介するボブログ音楽食堂。Vol.10の今回は、ビートルズ豪雨後の世界各地でニョキニョキと生えた筍(たけのこ)を掘り起こし、どれが一番美味しいかを読者のみなさまと品定めしようという企画。オマージュあり!カバーあり!パロディーあり!ビートルズ・チルドレンが憧れを具現化した作品をたくさんご紹介したいと思います! ※一回では終わらなので「続編」やります
序章:ぶりてぃっしゅ・いんゔぇいじょん
まずは「ビートルズ」と「ブリティッシュ・インヴェイジョン」のお話から。
1962年10月に“Love Me Do” で本国(=英国)デビューしたビートルズですが、実は米国でブレイクしたのはそれから約1年後のこと。63年11月に本国で発売された “ I Want To Hold Your Hand ”(抱きしめたい) が翌月に米国でリリースされ、64年2月のBillboard Hot 100で1位を獲得したのを機に米国で大ブレイク。「いまだっ!続けー!」と多くの英国ロックグループが“便乗輸入”され始めると流れは一気に加速し、間もなく世界中を巻き込んだこの社会現象は「ブリティッシュ・インヴェイジョン(British Invasion)=英国からの侵略」と命名されました。押されっぱなしだった米国音楽界は対抗馬を擁立すべくオーディションを敢行し、ザ・モンキーズ(The Monkees)を結成したほどでした。
第一章:すべてをあなたに!?
名優トム・ハンクス氏が脚本を書き初監督した作品「すべてをあなたに/that thing you do」は、このブリティッシュ・インヴェイジョンを巧みにパロった音楽映画で、米国ペンシルベニア州エリーというド田舎の四人組バンドとガールフレンドがビートルズ旋風に煽られてあれよあれよという間に有名になり、線香花火のようにプッツリ終わる様を描いた架空の物語です。
劇中のガールフレンド役=リヴ・タイラー氏の三歩下がった存在感が実にお見事!監督・脚本のトム・ハンクス氏もバンドのマネージャー役で出ていますが、「フィラデルフィア(93年)」「フォレスト・ガンプ(94年)」で2年連続アカデミー主演男優賞を受賞した直後に自ら臨んだ(望んだ)この作品、実はかなりの低予算で制作されたそうです。ハリウッド稀代の大スターが “ヒットしなかったらどうしよう…借金がたくさん残るなぁとビビっていた” と告白するのを見て、「ええお人やなぁ」と感動してしまいました。
この映画のサウンド・トラックアルバムは、ビートルズ初期の作品を徹底的にアナライズ(=楽曲分析)して書き下ろした甘酸っぱいメロディーの宝庫!本家はもちろん60年代中期のロックンロール/ポップスが好きな方はかなりの確率でどハマりするのでぜひ一度チェックを!映画に使う曲を探している噂が流れると全米からデモテープが集まり、「有名無名問わず」「エエ曲ばっか」の基準で選考した結果、劇中に既存曲は一切ナシ!すべてオリジナル曲での制作となったそうです(ハンクス氏が書いた曲もアリ!)。ブリティッシュ・インヴェイジョンの主語を→米国のローカルバンドに置き換えて描いたこの音楽映画。ここまで読んでピン!と来た方はもうmustです!
第二章:英国コメディー集団の大真面目なパロディー
ビートルズのパロディー史上「最高レベル」のプロジェクトは、「 ザ・ラトルズ/THE RUTLES 」であります。それは英国のコメディー集団「モンティパイソン」の一員エリック・アイドル(Eric Idle)氏とニール・イネス(Neil Innes)氏が中心となり、1975年に英国BBC-2のTV番組で始めた架空のロックバンドの物語です。
1978年に米国で放映されたTV映画「All You Need Is Cash=カネこそはすべて」にはミック・ジャガー氏やポール・サイモン氏も喜々として出演!「俺はラトルズになりたくて音楽を始めたんだ」とありもしないバンドへの憧れを延々と語ります。本家を手抜きなしに皮肉り徹底的にナメ尽くした内容はもはやパロディーの域を超えた独自性を確立。「さすがにここまでやったら本家の誰かに訴えられるだろうに…」と心配になった矢先にジョージ・ハリスンご本人が画面に出てきてアホなギャグをかますという手の込みようです。
映像作品では英国人特有の高貴なアホさが全開ですが、音楽アルバムでは本家の歌詞/メロディー/編曲と楽器の音色まで徹底的に分析して書き下ろした名曲が目白押し。その秀逸な出来栄えに21世紀の現在もフォロワーが後を絶たず、パロディーバンドであるはずのラトルズに影響を受けたと公言する世界中のミュージシャンが集り、おふざけでなく真面目なトリビュートアルバムを作ったほど。私の旧友であるグドール・ラッセル君(ニュージーランド人)曰く、「ラトルズ音楽の面白さはその歌詞にあり!」とのことですが、英語力がドリフの荒井注さん並みの私は頭ではなく毛穴で感じて楽しむようにしています。
トリビアな話しですが、このラトルズのドラマー=Rikki Fataar(リッキ・ファタール)氏は、ビーチ・ボーイズのレギュラードラマーを経た後、ボニー・レイット姐御のバンドで長年叩いているいぶし銀のドラマーであります!
第三章:サンタは苦労す
「もしも〇〇な居酒屋があったら」はドリフの鉄板コントですが、『もしもビートルズが他人のクリスマスソングを面白がって演奏したら……』という、本家マニアの逆鱗(げきりん)に触れそうな企画が具現化したアルバムをご紹介します。それは北欧デンマークはコペンハーゲンのロックバンド=THE RUBBER BAND(ザ・ラバーバンド)が、1995年の冬に人知れずリリースしたクリスマスアルバム「”XMAS! ” / THE BEATMAS」であります。
ネタに困って季節はずれなレコードを紹介しやがって…と訝しく思われるでしょうがこのアルバム、着眼点とセンスの良さがマニアも唸らせる大傑作!本家の音楽を細部まで克明に捉え、長年のファンも思わず「おお!」と膝を打つ作品だと信じておりますが、ビートルズ評論家のせんせがコレを紹介するのを読んだことがないので、不肖私easymanが今回ご紹介しようと思い立った次第です。ちなみに私はこのクリスマスアルバム、ブタのように汗をかく猛暑の季節も至極ふつーに愛聴しており、通年のヘビーローテーションTOP10に26年連続で堂々ランクインしております(それくらいカッコいいです)。
このTHE BEATMASのクリスマスアルバムが大ヒットしたという後記は見たことがありませんが、毎年冬になるとそっくり真似た“二匹めのドジョウ”企画がリリースされるのを見る限り、この地味なアルバムには侮れない影響力があるようです。
-ビートルズ豪雨後の筍を狩る! は続編やります!-
ボブログ音楽食堂「バックナンバー」のご案内! 次回Vol.11は書き上げ次第投稿します!
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Vol.2「踊るROCKに観るROCK、ちょっぴり大人のAOR」は→コチラ から!
Vol.3「アラ40/アラ50のお手本としてアニーとクリッシーを拝むべし!」は→コチラ から!
Vol.4「アラ40アラ50にオススメしたい! 69歳の女性ロック・シンガー、クリッシー・ハインドの傑作スタンダード集」は→コチラ から!
Vol.5「おうちにいてもワイハでアロハ!!の巻」は→コチラ から!
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Vol.9 「怒涛のハモンドオルガン特集 其の弐」は → コチラ から
AUTHOR /easyman
ビートルズが来日した年の生まれ。美容師・介護士の免許と実務経験があり、座右の銘は“髪(かみ)のケアから下(しも)のケアまで”。某美容メーカーの教育部門に19年間勤務し、なぜかプロ音楽家との演奏経験あり。一人しかいないのにナンバーワン営業マンと呼ばれる髪書房の特攻隊長。