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芸術の秋! 描けばカットが上手くなる
秋といえば、食欲? 読書? スポーツ?
美容師ならばやっぱり芸術の秋! ですよね。
そこで今回は鉛筆1本あればできるカットの上達法をお届けします。
それは切る前に「描く」こと。
描くためには形や質感をしっかり観察し、その特徴をつかまなければなりません。ただ「見る」だけでは「わかったつもり」になりがち。
じっくり観察して描いてみることで、形や質感が把握でき、クオリティが圧倒的に高まるのです。
そこで今回は、絵にもカット技術にも定評のあるYOKEのクリエイティブディレクターの江原堅志さんに、描いて楽しむカットの上達法を伝授してもらいます。
ドーン! これはカッポレというアジだそうです。
江原さんは登山、ボルダリング、ダンス、スケボーなどなどの多彩な趣味をすべてプロ並みのレベルでこなすマルチなタレントの持ち主。中でも釣りはスポンサーがつくほどの腕前です。
そんな江原さんの特技は、「魚の記憶スケッチ」。記憶で魚の絵を描くのが得意なのです。
江原さんの描いた魚の記憶スケッチがこちら!
左はヒラマサ、右はヒラスズキ。
描いてきた結果、ヒレの形や位置、体の曲線などが記憶に刻み込まれているので、何も見なくてもこれだけ再現できるのです。
江原さんはこの観察眼と絵の腕前をカウンセリングでも生かしているそう。スケッチによってスタイルのポイントが明らかになるので、お客さまとの共通認識が強まるのです。
では、絵をどのようにカットの技術向上につなげるのか。
絵のメリットが発揮されるのがコピーカットです。
次の3項目をよく観察して描いてみます。
①アウトラインの長さや角度、段
②ウエイトの位置とボリューム感
③表面に落ちる髪の長さやライン、質感
スケッチしてみたら、それを展開図に起こします。そして実際にカット。
特徴を掴みながら描いていけば、コピーカットも簡単!
描く→構造を理解する→カットする。このプロセスならばどんなスタイルでも再現できるはず。ということで、江原さんにはマンガのヘアスタイルを再現していただきました。
今回のお題はこれ!
©高森朝雄・ちばてつや/講談社
ボクシング漫画の金字塔、『あしたのジョー』の矢吹丈です。
画像検索をしてみてもジョーは大抵斜めか横顔が描かれていることが多く、正面から見るとどうなっているのかとても気になります。
まずはスケッチ。
左は見たままのスケッチ。右はそこから想像したスタイリング前の状態。
アウトライン:ネープは大きく外ハネ。フロントは大きく前に張り出しています。耳周りは大きくえぐれています。
ウエイト:ウエイトがなく、スリークなシルエット。
表面に落ちる髪:バックは外ハネの毛束が積み重なっています。フロントも短い毛束が重なっていて、全体的に太い束感があります。
バックはセイムレイヤーベース。フロントは先細りになっているので極端な前下がりと予測。毛束感はハイレイヤーによるもの。耳周りのえぐれはスタイリングで耳にかけているか刈り上げていると想像しました。
ハードタイプのスプレーを大量に振りかけ、ウイッグを傾けてフロントの毛流れを作りました。
実際にカットしたからこそ正面から見たジョーの髪型がわかりました。こうなっていたんですね…!
マンガやアニメのキャラクターのヘアスタイルは人間のつむじや毛流れ、時には重力すら無視されています。だからこそ再現のしがいがあるというもの。