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薄毛について考えてみた
美容師として年齢を重ねると、お客さまも同じように年齢を重ねていきます。当然、加齢によるお客さまの髪悩みも増えていくものです。近頃は男性に限らず、女性にも多いという「薄毛」の悩み。美容師はお客さまとどう寄り添うべきなのでしょうか。髪なくしてヘアデザインなし? それとも新しいビジネスチャンス? 薄毛の現状から、美容師と薄毛の付き合い方について考えてみました。この記事の薄毛の定義は、回答者が「薄毛である」と回答したデータを引用しています。
データ出典/(株)リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「薄毛に関する意識調査2022」
薄毛の人ってどのくらいいるの?
男女合わせた全体では、薄毛の人は17.0%。そのうち男性は26.0%、女性は8.0%。過去4年のデータを振り返ってもこの割合はほぼ変わりません。
一方、薄毛ではないけれど不安を感じている人もいて、男性は21.5%、女性は24.6%の割合となっています。
薄毛が気になりだした年齢は、全体平均では38.8歳。男性は37.9歳、女性は41.1歳。年代別の分布を見ると、男性のほうが女性よりも薄毛を気にする年齢が早いことがわかります。
現在薄毛の人で、薄毛について気になっている人は男性75.9%、女性93.9%。女性のほうが薄毛について悩んでいる人が多い状況です。しかし、男女ともに薄毛の改善については難しいと感じている人が7割近くいます。
薄毛が気になる場所は、男女ともに頭頂部が多め。そして男性は前頭部、女性は分け目が気になるという状況。
【ここまでのまとめ】
・薄毛の人は全体の2割弱で、男性のほうが多い割合
・男性は女性と比べて薄毛を気にする年齢が早い
・女性は男性よりも薄毛を心配している人の割合が高い
・男女ともに薄毛の改善は難しいと思っている人が多い
・男女ともに頭頂部の薄毛を気にしている。加えて男性は前頭部、女性は分け目
薄毛の人が行っていることは?
男性は自宅で行えるセルフケア中心の一方、女性は髪型そのものを薄毛が目立ちにくいように変える人が多いようです。これは女性が分け目の薄毛を気にしている人が多いことも影響していそう。また、今後試したい対策として、男性は専門クリニックを視野に入れている人が多いけれど、女性は美容室でできることを視野に入れている人が多い割合となっています。
【薄毛の人が今行っている対策TOP5 】
●男性
1位 育毛エッセンス、育毛ローションや育毛剤を使う(市販品) 25.3%
2位 薄毛対策用シャンプーやトリートメントを使う 24.0%
3位 自宅で自分の手で頭皮マッサージ 18.9%
4位 生活習慣に気をつける 12.6%
5位 市販の薬や漢方を使う 10.5%
●女性
1位 薄毛が目立ちにくい分け目、髪型にする 27.7%
2位 自宅で自分の手で頭皮マッサージ 25.8%
3位 育毛エッセンス、育毛ローションや育毛剤を使う(市販品) 23.7%
4位 生活習慣に気をつける 17.7%
5位 薄毛対策用シャンプーやトリートメントを使う 16.8%
【薄毛の人が今後試してみたい対策TOP5】
●男性
1位 育毛エッセンス、育毛ローションや育毛剤を使う(市販品) 25.7%
1位 薄毛対策用シャンプーやトリートメントを使う 25.7%
3位 薄毛治療、対策のできる病院や専門クリニックへ行く 23.1%
4位 自宅で自分の手で頭皮マッサージ 16.3%
5位 市販の薬や漢方を使う 15.5%
●女性
1位 育毛エッセンス、育毛ローションや育毛剤を使う(市販品) 34.1%
2位 薄毛対策用シャンプーやトリートメントを使う 29.9%
3位 薄毛が目立ちにくい分け目、髪型にする 28.1%
4位 自宅で自分の手で頭皮マッサージ 26.9%
5位 生活習慣に気をつける 26.7%
6位 ヘッドスパ、ヘッドマッサージに行く 22.8%
では、薄毛対策をして、効果を感じた実感率と効果実感までの期間をみてみましょう。男女ともにセルフケアよりも美容室や薄毛専門サロン、クリニックへ行くことに効果実感を感じていることがわかります。特に男性は理美容室での効果実感までの期間が3.4カ月と最も早いです。
【薄毛対策の効果実感率】
※割合は効果があると実感した率、( )内は効果実感までの期間
●男性
1位 薄毛対策メニューがある理美容室へ行く 77.8%(3.4カ月)
2位 薄毛治療、対策のできる病院や専門クリニックへ行く 71.3%(5.4カ月)
3位 薄毛専門サロンへ行く 58.2%(6.4カ月)
4位 ヘッドスパ、ヘッドマッサージへ行く 58.1%(5.7カ月)
5位 薄毛、抜け毛に効果のあるサプリメントを飲む 58.1%(5.7カ月)
●女性
1位 ヘッドスパ、ヘッドマッサージへ行く 46.3%(5.0カ月)
2位 自宅でヘッドマッサージャーなどの器具で頭皮マッサージ 44.5%(3.3カ月)
3位 市販の薬や漢方を使う 41.6%(6.0カ月)
4位 薄毛対策用シャンプーやトリートメントを使う 41.2%(3.8カ月)
5位 薄毛、抜け毛に効果のあるサプリメントを飲む 31.5%(6.8カ月)
では、薄毛の人がサロンで実際に相談しているかどうかというと、特に男性はどの世代も相談意向はあるものの、相談経験がある人は少ない割合に。しかし、薄毛が気になる年齢に比例してか、若い年代ほど美容師に相談したい男性は多いようです。
【サロンでの相談経験/相談意向】
●男性
相談経験あり|相談意向あり
20代 55.4%|70.6%
30代 38.2%|44.2%
40代 26.3%|31.2%
50代 20.6%|17.5%
60代 15.5%|11.1%
●女性
相談経験あり|相談意向あり
20代 37.5%|59.4%
30代 60.5%|54.0%
40代 46.1%|46.8%
50代 43.8%|41.7%
60代 39.2%|39.2%
サロンで相談したいのにできていない理由は、「恥ずかしい」という内面的なものが男女ともに多い。また、「商品を売りつけられそう」、「追加メニューの勧められそう」など、弱みにつけ込んだ商売チャンスに抵抗感を感じる人もいます。薄毛の悩みはとてもデリケートということを忘れずに。
【サロンに相談したいのにできていない理由】
●男性
1位 言い出すのが恥ずかしいため(勇気が出ない) 59.2%
2位 相談してよいアドバイスがもらえるかわからないため 33.5%
3位 商品を売りつけられそうな気がするため 19.7%
4位 周囲のお客さんに聞かれると聞かれると恥ずかしいため 19.1%
5位 施術時間が短時間なので、言い出すタイミングが難しいため 18.4%
●女性
1位 言い出すのが恥ずかしいため(勇気が出ない) 55.6%
2位 相談してよいアドバイスがもらえるかわからないため 44.4%
3位 商品を売りつけられそうな気がするため 29.2%
4位 追加メニューを勧められそうな気がするため 25.3%
5位 周囲のお客さんに聞かれると聞かれると恥ずかしいため 17.7%
【ここまでのまとめ】
・薄毛の人はセルフケアが多いものの、今後はヘッドスパや薄毛専門クリニックの利用も視野に入れている
・男性は薄毛対策メニューのある理美容室での効果を感じている
・女性はヘッドスパ、ヘッドマッサージの効果を感じている
・薄毛について相談したい、相談したことがある20代男性が多い
理美容室でやってみたい薄毛対策メニューは?
男女ともにやってみたいメニューの第1位は「薄毛が目立ちにくい髪型」、第2位は「ヘッドスパ、ヘッドマッサージ」。また男性に比べて、女性のほうがいろいろやってみたい割合が高いことがわかります。理美容室での薄毛対策で出してもよい金額で、もっとも高額だったのは男女ともに「薄毛の箇所をボリュームアップできるようなパーマ」でした。また、理美容室に限らず、1カ月あたりにかけてもよいと思う薄毛対策の金額は男性平均5,310円、女性平均3,655円で、男性のほうが高く、特に男性の20〜30代は突出して高額。薄毛が気になり始める年代が女性に比べて早いだけに、お金をかける若い男性が多いのかもしれません。
【薄毛対策として理美容室でぜひやってみたいこと】
【理美容室でぜひやってみたい薄毛対策に出してもよい金額】
●薄毛の箇所をボリュームアップできるようなパーマ
男性平均4,247円
女性平均4,952円
●ヘッドスパ、ヘッドマッサージ
男性平均2,752円
女性平均2,938円
●薄毛対策、予防になるシャンプー、トリートメントなどの商品購入
男性平均3,352円
女性平均3,300円
●頭皮や髪の診断
男性平均2,541円
女性平均2,257円
【1カ月あたりの薄毛対策にかけてもよいと思う金額の上限】
●男性の平均金額
全体 5,310円
20代 8,080円
30代 7,244円
40代 5,171円
50代 4,471円
60代 4,097円
●女性の平均金額
全体 3,655円
20代 7,234円
30代 3,813円
40代 3,562円
50代 3,063円
60代 3,499円
【ここまでのまとめ】
・女性は美容室でやってみたい薄毛対策メニューの割合が多く、金額も高い
・男性は薄毛専門サロン、クリニックへ行くことも視野に入れている人が多いためか、女性ほど理美容室でやってみたい割合は低め
・男性の20〜30代は薄毛対策費用が7,000〜8,000円と高額
美容師と薄毛のお客さまについての個人的考察
お客さまが薄毛に悩んでいる(かもしれない)、ということに真っ向から踏み込んでいく美容師はなかなか少ないでしょう。踏み込んだとしてもだいぶ信頼関係が築かれた上での会話になると想像します。お客さまから打ち明けられた場合の待ちの姿勢で対応する美容師が多そうです。
とはいえ、お客さまから言い出すのは恥ずかしくてできないという人は男女ともに半数以上ですから、まるで両想いなのに、行き違う片想いのようです。そのくらい、薄毛はとてもデリケートな問題ですね。
しかしながら、日本は世界に類を見ない超高齢社会を迎えていて(表現は厚労省サイトより借用)、男性においては20代から薄毛の悩みを抱えています。美容師がお客さまとともに年齢を重ねていくということは、それだけ大人の髪悩みも含めて、向き合っていくということです。
美容室、美容師ができることとしては、まずは薄毛対策用のカットやパーマを学ぶ、メニュー化(クーポン化)して相談・オーダーしやすくする、薄毛のカウンセリングや施術は座席の配置に配慮する、シャンプー後の濡れた髪をそのままにしない、など……。ちょっと考えてみただけでもたくさんありそう!
薄毛専門美容室も登場していますが、そこに行く手前の「なんだかちょっと薄毛が気になり始めた不安な人たち」を救うのは、いつも通ってる美容室だと思います。この「ちょっと不安」に応えられる美容師がたくさん増えるとみんなハッピーになれそうです。
AUTHOR /マキピピ
わたしにとって髪は自分の表現、スタイル、ファッション。世界中の人が自分の好きな髪で過ごせますように。