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失われた2年半を取り戻せ! 社内コンテストで「らしさ」解禁

コロナ禍で退職者が増えた理由

2020年3月から始まったコロナ禍は、社会のあり様を変えました。美容室も「密」が悪とされ、セット面に間仕切りを設置するなどお客との物理的な距離が広がりました。

“断密”は、社内コミュニケーションも同じです。対面で集まる全体会議や飲み会、社員旅行や社内運動会、社内バーベキュー、社内ボーリング大会など、社員の結束力を高める企画はことごとく自粛を余儀なくされました。

 

大阪府交野市を本拠に9店舗を展開する株式会社ビューティサロン モリワキ(以下MORIWAKI/森脇伸一社長)も、コロナ禍で内部環境が変わったサロンの1つです。

 

同社は「やさしい会社をつくりましょう~一人一人を大切に~」という経営理念の遂行をめざし、2019年に「第9回 日本でいちばん大切にしたい会社大賞 審査委員会特別賞」を受賞。想いを重ねる風土づくりを追求しています。その一環で充実した社員寮や社員食堂を備え「大家族主義」のもと成長してきました。でも、コロナが70年にわたって培ってきた会社の文化を脅かします。

 

サロンの他、アカデミー、社員食堂、オフィスを有するMORIWAKI本社

 

各種イベントで結束力を高めたくても、社会的に許されないもどかしさ。スタッフに寄り添えない辛さ。時に、悩んでいる1年生に気づいてあげられなくて退職を見送るしかないこともありました。社員と密な関係性を築けていたコロナ前までなら、別れを回避できたケースもあったとのこと。

 

レギュラー(教育)サロンにとって、サロンワークはチームワークの賜物です。面貸しサロンのように個の力で得られる報酬も素晴らしいですが、仲間と喜怒哀楽を共にするから得られる達成感は組織で働くメリットです。でも、会社という家族を形成しづらくなり、縁がつながりにくくなった2年半、この悩みと対峙してきたサロンは相当数あるでしょう—。

 

社内コンテストで血気集会

「天下統一! カラーMORIWAKIの戦い~カラー戦国時代の幕開け~」。

 

同サロンは、今秋に同社本社で社内コンテストを開催しました。秋冬のトレンドスタイルをテーマに、入社2年目以上の全スタッフが連帯して勝負に臨みました(1年生は審査員)。条件は以下です。

・4名1チームのチーム制(カット、カラー、メイク、モデル)※全12チーム

・カラーやパーマは事前に施術すること。当日施術はカット、メイク、スタイリング

・施術時間は45分間

・エクステンション、ウイッグの使用は禁止

・各チーム3分間のプレゼンテーションを行う

・カット展開図、カラーレシピ、メイクのポイントなどを模造紙に記入

・競技終了後、各チーム3分以内でプレゼンテーションを実施

・優秀チームには賞金を授与

 

各チームは模造紙にカラーレシピや創作意図を解説

 

同イベントを企画した森谷真弓・香里店マネージャーが明かします。

 

「当初は社内運動会を予定していたのですが、会場の都合で実施できなくなりました。そこで、社員みんなで盛り上がるには何をするべきか?と考え抜いた末に、社内コンテストなら技術力の向上と同時に、“仲間力”を再認識できる良い機会だと感じました。チーム戦にしたのは、ベテランも中堅もアシスタントも同じスタートラインに立ち、施術内容や役割を話し合って進める必要があるからです。世代や立場を超えたコミュニケーションが不可欠ですから。狙いどおり、どのチームも何日も前からモデルと向き合い、模造紙に意図を書き込み、プレゼン内容を話し合っていました」

 

森谷マネージャー

 

 

終了後は勝ち負けや世代を問わず、スタッフから「自信を持てた」「ドキドキした」「勉強になった」「来年もやりたい!」という声がたくさん挙がったそうです。久々に店舗間やジェネレーションの垣根を超えたMORIWAKIらしさを体現できたイベントだったのでしょう。

 

グランプリ作品

グランプリ

準グランプリ

 

第3位

 

特別賞

ミルボン賞

 

 

具体的には、以下のやりがいがありました。

・仕事で接する顔と異なる「素顔」をお互いに知る機会になった。

 

・チームによっては2年生がプレゼンに臨んだが「こんなに人前で話せたのか。頼もしい!」という発見があった。

 

・「人とあまり関わり合わないように」と言われて育った2年生や3年生が、コンテスト準備で先輩たちに混じり深夜まで店に残っ て頑張っている姿が嬉しかった。

 

・あえて模造紙にアナログで書かせたのはコミュニケーションの一環。中には、当日にスマホから画像を流したいと申し出た子もいたが、みんなでああだこうだ言いながら模造紙に記入する時間を大切にしたかったし、結果的にそれが連帯感を強めた。

 

・お客さまの前では、1年生も30年生も平等。目の前のお客さまが喜んでくれるかどうか。社内コンテストを通じ、美容師の評価を切磋琢磨できる機会をつくり、美容師だから得られる醍醐味をスタッフ間で共有できた……。

 

美容業の本質を考える

よく美容業は技術産業、サービス産業、教育産業などと言われます。これらの最大公約数として、人間力を問われる「人間産業」とも言われます。

 

だけど、この手の表現を聞くたびに思います。もし美容業を一言で例えるならお客、地域、社会、スタッフ……人と人との関係性の中で生きている「人間関係業」ではないでしょうか。

 

そう位置づけると、以前と比べ対人距離が広がった今、MORIWAKIのように社内コンテストを通して各自が披露した「人間劇場」は自身のありようを再確認するステージであり、閉塞感が漂う日常を後ろへ運び去っていく舞台装置なのかもしれません。その結果、これまで何気なく感じていた周囲のものが、徐々に新しい姿をまとって現れてくるのでしょう。

 

育てる力と育つ力。そろそろ共感を生み出す“暖密”が必要です。だって、社内コンテスト開催後、MORIWAKIの業績は堅調に推移していますから。

 

表彰式は大盛り上がり

 

 

 

nakao

AUTHOR /nakao

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