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ウィッグなんてなくてもいい社会が理想なんです(55JET ai代表/當間紀之)

おそらく日本で一番ヘアドネーションカットをしている東京・世田谷の美容室「55JET ai」の當間紀之代表にヘアドネーションの最新事情を伺ってきました。

後半にはヘアドネーションカットを始めたい人のFAQを記載したので、興味のある美容師さんはぜひ参照ください!

(このインタビューは月刊NEXT LEADER2021年12月号掲載の内容を加筆した記事になります)

 

とうまのりゆき◎1967年2月15日、静岡県生まれ。資生堂美容専門学校卒業後、都内1店舗で店長職を経て、28歳で二子玉川にて55JET aiをオープン。2015年からヘアドネーション活動に取り組み、JHD&C(ジャーダック)の認定講師に。デモンストレーションカットや美容学校の講師など、ヘアドネーションの周知活動に注力する。

ヘアドネーションを始めたきっかけを教えてください

創業20周年のタイミングで「これまで支えつづけてくれたお客さまや地域に恩返しができないかな」と思ったときに、友人がヘアドネーションカットをやっているのをSNSで知ったのが最初のきっかけですね。美容師だからこそできるという点がいいなと思いました。

サロンでは年間何名くらい切っているんですか?

昨年はコロナ禍にもかかわらず、471名の方に寄付をいただきました。ただ、通常のお客さまの予約の関係で受け付けられないだけで、本当は予約を取ろうと思えばいくらでも取れるんです。多い日は7~8名のご来店がありますね。よく取材でこれを言うと、1カ月の人数と思われるのですが、1日の人数です(笑)。営業日であれば、ヘアドネーションカットの予約が入らない日はないですね。

毛髪を寄付する際の送付状。添えてある缶バッヂは当時中学生の女の子がクラウドファンディングで製作したもの

ドナー(毛髪提供者)で多いのはどういった方ですか?

ネットで調べたり、友達の紹介でうちに来ていただくドナーの方が多いのですが、実は半数近くが中学生以下なんです。小学生の高学年にもなると、意識の高い女の子は美容やファッションに目覚めるじゃないですか。そうした子たちがヘアドネーションしたっていうのが友達の間とかで広まっていったりして。本当に子どもたちのネットワークはすごいですよ。

地域はどの辺りから来られるんですか?

さまざまな地域から来ていただいています。コロナ前は夏休み期間中の休日にチャリティーイベントをしていたので、北は東北から南は九州まで全国から来ていただけました。チャリティーイベントの際はSNSで募集をかけるんですが、50名位の枠が5分で埋まってしまうんですよ。また、イベントにはヘアドネーションカットに興味があるけど、どうやればいいのかわからないという美容師さんも来られて、自然に活動が広がっている実感はあります。

髪の毛を切るときに気をつけていることはありますか?

当たり前ですが、31cm以上切るのでスタイルチェンジなんです。だからカウンセリングも入念にする必要があるし、「切って良かった」と思ってほしいので、美容師側も自然と気合いが入りますよね。また、記録に残すのも大切なので、カットの過程やビフォーアフターの撮影、最初の1束を本人に切ってもらうなど、思い出づくりもしています。なので、通常のカットは60分枠ですが、ヘアドネーションは90分枠で予約を取っています。

今年6月に発刊されたJHD&C初の監修本。本のサイズは31cm(ヘアドネーションに必要な髪の長さ)という遊び心も

技術的な難しさはありますか?

技術的に特に難しいことはありません。それよりも、なるべく捨てる髪をつくらないということは意識しています。無理に切って仕上がりが微妙になるのであれば「もう少し伸ばしてから切りませんか?」と提案することもあります。ドナーの方の気持ちに最大限に寄り添いながら、僕らがやっていることの先には「髪の毛を失った子どもたちの笑顔がある」ということをイメージするのが何よりも大切だと思います。

どのくらいの長さを切ることが多いのですか?

僕が認定講師をしているJHD&Cでは31cm以上の長さが必要なのですが、実際にウィッグにする際には15cmで折り返して使用するので、ショートウィッグになります。ロングウィッグは50cmの長さが必要なのですが、ここから急に提供者のパーセンテージが減るんです。でも女の子だったら圧倒的にロングウィッグが欲しいじゃないですか? だから僕らとしても、1~2cmを無駄にしないように切ります。1~2cmを無駄にするってことは、1~2カ月前に切っても同じということ。ドナーの方が頑張ってきた期間が無駄になってしまうわけですから。

ドナーの方は女性が多いのですか?

男の子も結構来ますよ。ちなみにテレビの取材だと、男の子がヘアドネーションのために髪を長く伸ばしたらクラスで陰口を叩かれたとか、そういうストーリーにされがちなのですが、本人たちに悲壮感なんてないというのが最新形です(笑)。本人たちはもっとフラットだし、ジェンダー平等の観点からも多様性を認める報道をもっとしてほしいと思いますね。

多様性といえば、當間さんはヘアドネーション活動を通じて、東京パラリンピックの聖火ランナーに選ばれました

世田谷区の聖火ランナーを務めさせていただきました。聖火リレーのコンセプトは「あなたは、きっと、誰かの光だ」。現場で「年齢、性別、国籍、障害の有無をなくした共生社会をめざす」というアナウンスが流れました。ヘアドネーションのゴールもそこだなと思っています。

東京パラリンピックの聖火リレーのトーチを展示中

どういうことでしょうか?

パラリンピックの観戦でも最初は胸がいっぱいになりましたが、いつの間にか純粋に競技を応援している自分がいました。つまり、意識を変わらなければいけないのは僕らの方なんです。ウィッグをつける目的って周りの目が気になるからですよね。こうした僕らの見方が変わっていけば、ウィッグなんかなくてもいい社会、さらにはウィッグは選択肢の1つで、つけてもつけなくてもいい社会がつくれると信じています。

最後にヘアドネーションカットに興味を持っている美容師さんに向けてメッセージをください

僕がよく言っているのはHAIRの力です。HAIRってスペルをを分解し、HをHuman(人間らしさとか内面に持っている誰かの役に立ちたいという気持ち)、RをRecipient(ウィッグを必要としている子どもたち)と考えると、その間には何があるでしょうか? HAIRのHとRの間には「AI(愛)」があるんです。ドナーの方の想いが愛を通じてレシピエントの方の笑顔に生まれ変わる。僕たち美容師はその橋渡し役だと思っています。

ヘアドネーションを支援する募金箱

ヘアドネーションカットを始めたい人のためのFAQ

ヘアドネーションに協力したい場合は?

ヘアドネーション団体は複数あるが、當間さんが認定講師を務めるJHD&C(ジャーダック)は歴史も古く、賛同サロンも2,171店(10月15日現在)と多いのでおすすめ。頭髪に悩みを持つ18歳以下の子供たちに医療用ウィッグを無償提供している。

NPO法人 JHD&C(ジャーダック)

大阪区大阪市北区浪速町13-38 千代田ビル北館7A

https://www.jhdac.org

ウィッグ用に寄付できる髪の毛とは?

JHD&Cで規定されている寄付可能な髪の毛は以下の通り。メディカル ウィッグ(※)は折り返して植毛するため、最低でも31cmの長さが必要となる。カラー、パーマ、プリーチヘアも引っ張って切れるようなハイダメージ毛でなければ寄付できる。

※株式会社アデランスの登録商標

・31cm以上の長さがあること

・カラー、パーマ、ブリーチヘアもOK

・完全に乾いていること

ドネーションカットする際の注意点は?

髪の毛が湿っていると雑菌が繁殖したりカビが生えたりするため、ウィッグの素材として使用できなくなる。また、毛束をしっかり握らないと切り口が斜めに入ってしまうので注意が必要。

・カット前に髪の毛を濡らさないこと

・毛束が太いと切り口が斜めになり、十分な長さが取れないことも

・クセ毛やパーマの場合は軽く伸ばした状態で長さを測ること

わたなべ

AUTHOR /わたなべ

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