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日本最北端の美容室は、稚内?礼文島?利尻島?「北海道に帰ってきたらカリスマでした(笑)」

2006年7月号の月刊BOBから、最北端の美容室を訪ねた記事をお届けします!記事は古いですが、紹介するサロンは現在も最北端。取材を受けてくださった美容師さんのお話も色褪せず新鮮です。

最南端サロンの記事はこちら!

最北端サロンは稚内にあった!

2006年時点では、日本国内の美容室の数は21万軒。その中の最北端、北緯ランキング1位〜3位にお話を聞きました。(ちなみに現在は25万軒!15年で4万軒も増えたんですね…!)

稚内のパール美容室、礼文島のヘアーサロンアツコ、利尻島のantilの三つ。中でも緯度が一番高いのは稚内のパール美容室です。以前は宗谷岬に美容室があったこともあるとか……!

なお、インターネット調べではありますが現在パール美容室とantilは閉業。稚内市には他にも美容室がありますが、いずれも礼文島の北端に位置するヘアーサロンアツコに比較するとだいぶ緯度が下がりますので、現在の最北端サロンはヘアーサロンアツコのようです!

では、当時のインタビューを北から順にお届けします。

「時代遅れにのんびり生きてます(笑)」 北海道稚内市 パール美容室 越野七々美さん

北にロシア・サハリンを臨む

北緯45度26分32・95秒。

北海道稚内市恵比須5丁目の緯度である。パール美容室の住所で、美容室としては最北端に位置する。全国の美容室21万3313軒(2005年3月末現在・厚生労働省発表)で最果てのチャンピオンだ。

地図でわかるように稚内市の宗谷岬、礼文島のスコトン岬、稚内市のノシャップ(野寒布)岬の順に緯度が低くなっていく。地元の事情通によると宗谷岬に美容室があったが、すでに廃業したという。 ノシャップ岬の突端までは、もう1㎞に満たない道路に面しているパール美容室。その岬からは北にロシアのサハリン、東に宗谷岬、西に利尻・礼文島が望める。

3年前に移転新築した店舗併用住宅は、こぢんまりとしてこぎれいだ。以前のサロンから2軒南に位置する現在地に土地を買って新築した。

不景気の直撃の中も、じっと、のんびりと

越野七々美さん(58歳)。団塊の世代の走りの1947年7月生まれだ。稚内に生まれ育ち、大谷女子高校(現在は共学)卒業半年後に市内の美容室に住込みで勤め78年5月、30歳で独立。ずっと地元で美容の道を歩いてきた稚内っ子である。

利尻・礼文島と同じように稚内は風の強い街だ。文字通り風雪に耐えて美容人生を送ってきた。

「昔はにしん、すけそうだら、ほっけ漁でにぎわういい街でした。最近は景気が悪くて大変。旭川からやってくるディーラーさんの話では、どこの美容室も2割から2割5分の落ち込みだと言ってました。店販も激減です。しばらくはじっと我慢ですね」

越野さんはずっと独身を通してきた。老後のためにと貯蓄もした。その蓄えで土地を購入したが、「思ったよりも早く不景気が来てしまった。あと3年待ってくれたらよかったのに(笑)」。

水産関係にパートで出ている主婦層の仕事が減って、景気はドン底という。ショートに強めパーマの定番客の来店サイクルが伸びているのだそうだ。

「風が強くて寒い街だけど、魚はおいしいし、ノシャップの夕陽はオレンジに染まってきれいですよ。今度来るなら夏がいい。私は携帯もFAXも、車もない生活。時代遅れにノンビリ生きてます(笑)」

 

「私は海を見たら安心できる」 北海道礼文郡 ヘアーサロンアツコ 白取敦子さん

親子二代で、札幌での美容修行を経て礼文島へ

フェリーで稚内港から1時間55分。「ようこそ礼文島へ」と歓迎の看板がある香深港の小高い山肌には、所々に残雪が見える。

4月も下旬の22日というのに気温は2度。きわどく氷点下を免れている。しかし風速1mにつき体感温度が1度低下するという。ビュービューと音を立てて吹きすさぶ強風で、その寒さは半端でない。  ちょうど同じ日に、BOB編集クルーが最南端の石垣島で取材をしているが、そちらは30度だ。

2度と30度。冬と夏。日本は狭いというが、この温度差をみれば決してそんなことはない。

5月から8月にかけての礼文島は高山植物、馬ふんウニ、昆布などを求めて観光客が殺到し、島の日常は一変する。ただし、美容室の日常は少しも変わらない。だが、礼文島北端の船泊にあるヘアーサロンアツコの白取敦子さん(52歳)の日常は、もうすぐ一変する。長男の智さん(28歳)さんが、札幌での美容の修業を終えて船泊に帰ってくるからだ。

美容室を一緒にやれる楽しみがある。夫婦2人だけだった家庭にも、また活気が戻りそうだ。

働きに出る船の中で泣いた15歳。故郷へ戻って結婚した22歳。

白取さんは礼文島最北端のスコトン岬出身で、中学を卒業と同時に釧路市の美容室に住込みで就職。

「親に迷惑をかけたくないから、手に職をつけるために住込みの美容室を探しました。でもまだ15歳。船泊の港を出る船の中で泣きました」

7年後に戻って結婚。手に職をつけたからこそ、1981年、自分の店を持つこともできた。

営業は朝8時30分から6時。定休日は日曜。1年に1回は札幌で街を見たりカットを勉強してくる。

「漁獲量が減って景気が悪いし、就職先がないから若い人はみんな札幌に行ってしまう。でも礼文の人はあったかい。近所同士の触れ合いがあります。だから戻ってきました。私は海を見たら安心できる。島の四季を感じながら毎日暮らしています」

「戻ったら利尻島のカリスマでした(笑)」 北海道利尻郡 antil 浜田奈奈子さん

 

大手サロンでの店長が、地元に戻ったらカリスマ美容師!

フェリーの港は利尻島北端の鴛泊にあって、お訪ねする美容室のAntilは、利尻島最南端の仙法志御崎にある。この仙法志御崎公園からの眺めこそが利尻富士の雄大な景観を最も楽しめるポイント。ちなみにこの土地は、Antilを経営する浜田奈奈子さん(41歳)の嫁ぎ先の所有である。

利尻を訪れる観光客なら必ず訪れる公園だ。中にはおみやげ物屋もあり、あざらしも飼育している。これも浜田家のもので、旅館も経営している。

浜田さんは道立利尻高校を卒業と同時に、札幌の大手サロンに就職した。そこで店長6年の経験を積んで、34歳で利尻に戻ってきた。

「戻ったらカリスマ美容師でした(笑)。なにせシザーズケースをつけているだけで珍しい。島で一番若い美容師だし、札幌ですごい美容室の店長さんだったと噂です(笑)。ボブベースに少しレイヤーを入れたヘアスタイルが、地元では新鮮なスタイル。若いお客に人気で、多いときには1日15人が集中しました」

肝心の地元の利尻では放映されなかったが、利尻のカリスマ美容師として東京のキー局の民放TVでも紹介された。それを見た札幌時代のお客や友人から、たくさんの電話が入ったという。

「刺激を受けるため、札幌には時々出ます。でも講習より街を見ることにウエイトが行く(笑)。雑誌の写真を見たら大体つくれるから、今さら何を勉強とも思います。でも怠けると、いいこと悪いことすぐに広がるのが田舎。夏の風物詩のウニ剥きは気晴らしになって楽しい(笑)。利尻昆布は重くてヌルヌルして気持ち悪くてしんどい(笑)。店の前をおしゃれな女性が歩いていく環境じゃないけど、ゆっくり生きていける。ずっと走ってきたから、おばあちゃんみたいだけどゆっくりと生きたいですね(笑)」

2021delivery

AUTHOR /2021delivery

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