ボブログ

美容室の奨学金支援制度を考える
新卒スタッフが入社、活躍する春本番!
彼ら彼女らがサロンに新鮮な空気を運んでくれる一方で、専門学生や大学生の約4割が奨学金を受給していると言われています。
入社直後に長期にわたる返済がはじまり、その中で返済ができずに美容師を続けられなくなる人もいる中、奨学金にまつわる実態と、雇用する美容室側の対応をまとめました。
(本記事は月刊NEXT LEADER 2020年4月号掲載の記事を再編集したものです)
奨学生数と貸与額の推移
日本における奨学金事業のうち、約7割を占めているのが独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)だ。同機構の調査によると、奨学金の貸与額・貸与人数ともに2013年にピークとなり、そこからほぼ横ばいに推移。現在は約130万人の学生が利用する。

出典:平成28年 奨学事業に関する実態調査報告((独)日本学生支援機構)
貸与学生の在籍校数
奨学金貸与者が在籍している人数が最も多いのは専門学校。全国に2,489校もあり、専門的な技術や技能を取得する学生にとって、奨学金はより身近な存在となっている。

出典:平成29年 奨学金事業への理解を深めていただくために((独)日本学生支援機構)
返還者数と延滞者数の推移
返還者数は年々増加しており、それに合わせて「1日以上の延滞者数」も増えている。しかし、「3カ月以上の延滞者数」は減少傾向にあり、全体の占める割合も減少。長期に渡って返還を滞納している人は少なくなっているようだ。

出典:平成29年 奨学金事業への理解を深めていただくために((独)日本学生支援機構)
美容専門学校の先生の声を紹介
弊校の奨学生のほとんどは、日本学生支援機構の奨学金を選んでいます。月々の貸与額についての説明は聞いていると思いますが、借りている時点で返済のことまで考えている生徒は少ないと感じます。県外に出る生徒は全体の2割ほど。8割は地元での就職を選びます。実家暮らしであれば親のサポートも多少は受けられるかもしれませんが、県外で一人暮らしをしながらの返済は厳しいと思います。入社後、学生の経済状況などをオーナー様にも知っていただけると大変ありがたいなと思います。(足利デザイン・ビューティ専門学校)
美容室に聞いた「奨学金支援制度」アンケート
NEXT CLUB会員を対象に奨学金にまつわるアンケートを実施しました。ぜひサロン経営者のリアルな声と対策を参考にしてみてください。
アンケートは2020年1月29日~2月8日までの期間で実施(n=46)
サロン内で奨学金を借りているスタッフはいますか?
奨学金を借りているスタッフが在籍しているサロンは全体の6割弱。店舗の規模にもよるが、スタッフの約1~2割が奨学金を借りているという回答が多かった。
サロン内で奨学金返済を支援する制度はありますか?
奨学金を借りているスタッフがいて、なおかつ支援制度を整えてるサロンは28%。スタッフの現状は把握できているが、支援制度となるとハードルは高くなるのかもしれない。
具体的にどんな支援制度を整えていますか?
・返済金額に合わせて給与を5,000~10,000円増額
・助成金を利用し、奨学金を借りている本人の負担が総額の1/3になるように規約を作成
・新卒の場合、入社後36カ月は月5,000円の手当で返済をサポート
・仕組みではないが、返済で生活費に困窮した際には会社からまとまった金額を貸し出し、勤務しながら少しずつ返済してもらう
・保証人契約を結び、1カ月3万円×3年間=108万円を貸し出す。3年間勤務したら返済不要。3年以内に退社した場合は全額返済してもらう。
・一定額を貸し出し、勤続年数に応じて返済を免除する
返済支援制度を整えることで求人は増えましたか?
サポート制度が直接求人に結びついている例はまだ少ないようだ。しかし、入社したスタッフが定着につながりやすいという声は多い。
返済支援のための予算はどのように準備していますか?
自社で全額負担しているところが6割と多いが、都道府県や市町村など自治体が実施している助成金を活用しているサロンもある。
奨学金返済について今後どのような対応策があればいいと思いますか?
・国が学費の負担を減らす仕組みを整えてほしい
・奨学金の金利をもっと下げてほしい
・財務体質を強化して補助ができればいいが、根本的には美容学校の1年制への変更のような金銭面でのハードルを下げることが必要
・高卒採用と育成の主流化
・奨学生を採用した会社に向けた助成金制度などがあるといい
・自治体の補助金や助成金があるなら、もっと周知するような対策をしてほしい
誌面ではさらに「助成金活用で返済支援するサロン実例」や「全国自治体の補助金、助成金一覧(一部抜粋)をまとめています。奨学金を借りているスタッフがいるサロン経営者はぜひご活用ください。