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アフターコロナの美容業界、美容室を想像する

美容業界はもちろん、日本、世界を大きく変えた「コロナ」。今私たちが考えるべきはコロナ後の美容業界、美容室を想像することではないでしょうか。

ホットペッパービューティーアカデミー長である千葉智之さんに「コロナ以降のお客さまの変化」を読み解いてもらいながら、アフターコロナにおける美容室経営のヒントとチャンスを聞きました。

 

コロナ後も約8割が美容室を変えていない、理由は「人」にお客がついているから

 

――コロナ前と2020年4月~現在までのコロナ以降を比較した際、美容業界におこった変化は何でしょうか。
千葉さん:一番感じたのは、サービス業や小売業と比較すると美容業、特にヘアは「非常に力強く戻った」ということです。もちろん緊急事態宣言下にあった2020年4月~5月の売り上げは大きく下がっていますが、6月以降は、エリアにもよりますが昨対比プラスの売り上げを記録した美容室も多かったと聞いています。

――美容室が「非常に力強く戻った」理由はどこにあるとお考えですか。
千葉さん:2020年8月の調査結果なのですが、コロナ以降にこれまで利用していたヘアサロンを変えたかどうか聞いたところ、約8割がコロナ前と同じヘアサロンを継続利用していることがわかりました。これも他業界と比べて非常に高く、理由を聞いてみると「施術者・スタッフを信頼しているから」という回答が約62%を占めました。2位の「自宅から近いから」と回答した約23%を大きく引き離す結果となっています。お客さまがスタイリストである「人」についていることは、大きな要因です。例えば飲食は「お店」についている場合が多いと思います。

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2020下期」(2020年8月調査)

 

――美容と他業界との違いはどこにあるのでしょうか。
千葉さん:
僕自身の経験から、東日本大震災後やリーマンショック後を思い出しても、他の業界より美容はいち早く戻っていたと記憶しています。特に「ヘア」はやはり必需なんだなと改めて感じました。“髪を切ること”が活力を生む証拠でもあると思います。また、切らないと気持ち悪いと感じる人も多く、必需の中でも重要度が高いと思います。
2020年5月の自粛期間中にとったアンケートでは、セルフケアで白髪染めをした方が43.9%、前髪カットをした方が40.5%と非常に高い数字になっていますが、今後も白髪染め、前髪カットをセルフケアに切り替えると答えた人は4%以下です。「やっぱりサロンじゃないとダメだよね」とコロナでヘアサロンの価値が改めて認識されたといえます。

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「新型コロナウイルス影響下における美容サロン利用に関する意識調査」(2020年5月調査)

 

今後も続くリモートワーク、マスク着用で変わる需要メニュー

 

――ヘア以外の美容の分野で、コロナ後の気になる変化はありますか。
千葉さん:
予約データの変化をみて意外と感じたのは、比較的近距離での施術となり、贅沢・嗜好品でもあるエステも力強く回復していることです。中でも脱毛メニューは好調で、これはヘアと同じく必需だからでしょう。また、リラクゼーションでは『ホットペッパービューティー』のフリーワード検索では「骨盤」「整体」というキーワードが上がってきています。リモートワークが増えたことが背景にあり、ニーズが高まっていると思います。
また、マスクをしても露出する場所であることから、アイメイク・アイブロウに関心が高まっています。アイサロンのアイラッシュ・まつげパーマのサロンメニューが「時短」ニーズにマッチしているでしょう。ネイルでは、「ワンカラー」「マグネットネイル」など手軽な時短メニュー、自己満足につながるデザインに需要が集まっており、エステ・リラクゼーション、アイ、ネイルそれぞれにコロナ禍において注目されているメニューがあります。
旅行に行けない、外出を控えなければならない、そういうストレスの発散先が美容分野に向いているということは、家計における美容消費の支出割合がのびていること、美容家電メーカーの決算で売上が伸びていることからも想像できます。

――ヘア以外の分野で好調なメニューなどがあれば教えてください。
千葉さん:
店販はネイルもエステも好調です。ネイル分野では頻繁なアルコール消毒による手荒れをケアするために「ハンドクリーム」が売れていると聞きました。エステでは自宅でのケア(脱毛後の「アフターケアローション」)とサロンでの脱毛を組み合わせて提案した成功事例もありますね。

――エステの成功事例を美容室でも応用したいですね。
千葉さん:
すでにヘアの分野でも成功事例はあります。ただ単にECサイトでケア商品を買うというよりは、信頼している美容師さんのアドバイスのもと店販商品を買うというもので、「私のためのアドバイス」がキーワードです。サロンオリジナルのケア商品をSNSを活用してお客さまと開発したり(AFLOAT/東京・名古屋)、アプリで担当美容師に店販購入を相談できるというサービス(apish/東京)も既に実績があります。弊社のサイト上でも、ヘアカラークーポンとカラーのモチをよくするための「カラートリートメント」をセットでメニュー化している例も目にします。いずれにしても、お客さまとのコミュニケーションをベースに、ソリューションとして商品を提供するというのがアフターコロナのスタンダードといえそうです。

 

コロナ以降、髪質改善メニューの需要がアップ!

 

――コロナ以降、美容室で需要が高まっているメニューを教えてください。
千葉さん:
コロナ以降、髪質改善メニューへのニーズが高まっています。コロナ前から年々需要は増え続けていますし、2021年1月の『ホットペッパービューティー』のフリーワード検索ランキング(アプリ)では10代~50代女性の1位または2位に「髪質改善」のワードがランクインしています。

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2020年下期」(2020年12月発表)

 

――その他に伸びているメニューはありますか。
千葉さん:コロナ前からですが「インナーカラー」は20代、30代、40代と幅広い世代から需要があります。また、暗くする白髪染めではなく、ハイトーンカラーと組み合わせたデザイン性のある白髪染めの需要が増えているようです。今後もカラーデザインへの意識は幅広い世代で高まるだろうと想像します。
また、総務省の家計調査の3カ月単位での平均推移を見てみると「モノ消費」(理美容用品)は昨年2020年の10月~12月の4半期が4,089円と過去最高の数値となっていることも注目しなければなりません。(2019年の7月~9月時の4,437円は、2019年10月に実施された増税前の駆け込み需要によるものと考えられる。)
首都圏を中心に2021年1月~3月は2度目の緊急事態宣言が発令され、この数字がどこまで伸びるかわかりませんが、やはり店販には可能性を感じます。

出典:ホットペッパービューティーアカデミー
※総務省「家計調査」より、ホットペッパービューティーアカデミーによるデータ編纂

 

「信頼」は進化して“シン密(シンミツ)”へ!

 

――貴社が発表された、お客さまとの新しい信頼の絆=“シン密”について教えてください。
千葉さん:リクルートグループは、「コレカラ会議」と題し、日本の未来を“良い未来につなげる兆し”を情報発信しています。コロナ禍で当たり前の生活もままならない昨今、飲食や美容を事業領域としているなかで、“なんとかお店を続けたい”“お客さんによろこんでもらいたい”“従業員を守りたい”といった思いで経営をされている方々も多いと思います。今までサービスを通して「街を元気にしたい」「集客をしたい」などお店の想いに寄り添ってきましたが、領域を横断して不可逆な変化から見える兆しを情報発信していくことで、さらにお役に立てるのではないかと考え始めた取り組みです。
今回美容領域から発表した「シン密~新密・心密・深密」は、サロンとお客さまの「信頼」のあり方が大きく広がっていることを表したキーワードです。お客さまがコロナ禍で美容サロンに求めるもの、それは「信頼」であることは間違いありません。コロナ以降、技術やサロン内での施術がメインの「信頼」はサロン外へも広がり、オンラインカウンセリング、他業態店舗コラボレーション、店販での工夫など活動が広がっています。
「新」しい信頼、「心」の信頼、「深」い信頼。この3つの「密」が、今後のヘアサロン経営のヒント、チャンスにつながると思っています。

千葉 智之/2005年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。2006年よりホットペッパービューティー各事業部を歴任。戦略企画担当、アーバン美容2グループ、東名阪センターグループ責任者を経て、ホットペッパービューティーアカデミー設立に従事。2013年7月よりホットペッパービューティーアカデミー長。ビジネス書を3冊出版。

 

 

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趣味は占いに行くこと。好きなテレビは『がっちりマンデー!!』です。『Ocappa』→『BOB』→産休&育休→『ボブログ』を執筆したり『ボブログTV』の動画撮影に奔走しています。

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