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違いの分かる女が斬る! J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲のあれこれ! ボブログ音楽食堂 Vol.6

序章もしも居酒屋で知らない人が待っていたら…

前回(Vol.5)は、干物の「こまい」から→Hawaii音楽へと、繋がりもへったくれもなく話しが飛んだボブログ音楽食堂。Vol.6となる今回は、いつもの待ち合わせ場所(浅草の某居酒屋)にいるハズの人がおらず…。代わりに「いないハズの人」がじーっとこちらを睨んでいるという、なんとも不穏な状況で取材はスタート!?

第一章【ダ・イ・ダ・ハ・ダ・レ・ダ!?】

【編集長:以下も編集長】あー、来た来た!こっちこっちー!きっとあなたよね?easymanさんって。いつもウチの「変」集者が取材でお世話になっているそうでどーも。実は諸事情がありましてね、今回は編集長の私が「代打」で来ましたから何も心配は要りませんよー。あの娘、見た目も中身もフツーじゃないから、相手するのけっこう大変だったでしょ?

【easyman:以下e】はぁ…編集長自らが「代打」ですか…。もしかしてあの「変」集者さん、お辞めになったとか⁉

【編集長】いえいえ、そうじゃないのよ。締め切りを過ぎてもぜんぜん原稿が上がってこないから、事務所の会議室に軟禁していま書かせているところなのよ。あの娘、原稿は遅いくせに逃げ足は速いから、トイレへ移動するときも「監視付き」でねー。で?今回の「音楽食堂」のテーマは何だったかしら? 私はクラシック音楽しか聴かないんですけど、話しが通じるかしらねぇ…。ちなみに私の前でブーニンとキーシンの悪口を言った人は翌日「消息不明」になりますから、発言にはくれぐれもお気を付けになってね♡!

第二章【編集長はバッハがお好き!?】

【e】(酔うにつれどんどん雄弁になる編集長殿。既にどちらが取材を受けているのか判らない状態…)そうですかー。編集長は器楽曲(※)が、特にJ.S.(=ヨハン・セバスティアン)バッハの「無伴奏チェロ組曲」がお好きなんですか。その「理由」ってのはなんですかね?

(※器楽曲…単体の楽器のみ、または異なるひとつの楽器の伴奏のみで演奏されるクラシック音楽の分類/フォーマット)

【編集長】音楽家の「曲の解釈」と「表現力」の違いが判り易いからかしら? 巧いとか下手とかじゃないのよねぇ…。「超」が付くような一流の演奏家でも、おんなじ曲を演奏してこんなに違いが出るんだ!っていう驚きは、バッハの無伴奏チェロ組曲が一番面白いと私は思うワケよ。あー、すみませーん!ここにガソリン補給ねー!(←たぶんビールのおかわりのこと)

【e】ところで編集長、この曲をチェロ「以外」の楽器が演奏したのって、聴いたことありますかね?

【編集長】え!? あの無伴奏チェロ組曲を、チェロ以外の楽器で弾いたレコードってこと? 練習のためじゃなくて? 録音作品としてよね⁉ うーん…公私ともに百戦錬磨の私も、そればかりは経験がないわ…。例えばチェロ以外でどんな楽器の演奏が残っているのかしら?

【e】例えば「サキソフォン」。テナーサックスでこの無伴奏チェロ組曲を「全曲」演奏したアルバムがありますよ!日本人のテナーサックス奏者|清水靖晃(Shimizu Yasuaki)氏が96年に1-2-3番を、99年に4-5-6番を録音してそれぞれアルバムとして世に送り出したんですよ。

↑“Cello Suites 1-2-3” / Yasuaki Shimizu & Saxphonettes(サキソフォネッツ)

↑同4-5-6番

【編集長】全曲テナーサックス一本だけで⁉ そのお方はどちらの世界の音楽家なの?

【e】清水靖晃氏はJazz畑のひとで、渡辺香津美氏や坂本龍一氏、サザンオールスターズのアルバムでも演奏しています。このバッハアルバムは、曲中のごく一部=和声の箇所だけは他のサックス奏者が加わっていますけど、それ以外はほぼ清水氏のテナーサックスの「独奏」ですね。楽器以外の大きな「特徴」は、1~6番までそれぞれの曲に合った「残響」を表現手段として計算しているところですね。例えば「2番」は栃木県宇都宮市北西部の地下数十メートルにある大谷石(おおやいし)地下採石場で、「4番」は岩手県釜石市の地下500メートルにある釜石鉱山花崗岩(かこうがん)地下空洞にわざわざ潜って録音しています。「5番」は(イタリア)ヴェネツィアの貴族コンタリーニ家が17世紀に建造した「離宮」の3階まで吹き抜けた大部屋で。「6番」は(イタリア)パドヴァ市の貴族が18世紀に建てた巨大なお屋敷で録音と、有名な音楽スタジオや歴史的なコンサートホールは一切使っていないんですよ!

【4番】を録音した場所~釜石鉱山花崗岩地下空洞(岩手県釜石市)先記の“Cello Suites” / Yasuaki Shiizu & Saxphonettes の解説書より

【編集長】へぇー!面白そうねぇ!じっくり聴いてみたくなっちゃったから、早速〇mazonでポチるわ(と超至近距離でスマホを覗く姿は、相応の年齢であることを推察させる…)。私ね、音楽はダウンロード配信では買わないし、iPod+イヤフォンや無線のbluetoothスピーカー経由で音楽を聴くの、あまり好きじゃないんです。有線ケーブルを通った信号がスピーカーを鳴らして、空気がたっぷりと振動した音を聴かないとどうにも気持ち悪くって…。ウチの20代の編集者にはいつも大爆笑されるんですけど、こればっかりはどうしても譲れないんですよねぇ(※原稿の締め切りは二日間までなら譲るらしい)。

第三章【バリサク吹いて救急搬送!?】

【e】他にも「バリトンサックス」での演奏もありますよ!オランダのクラシック演奏家 Henk Van Twillert(ヘンク・ヴァン・トゥイラート)が2000年に、バリサク一本で全曲吹き倒してアルバムにしましたよ!

“Bach Cello Suites Arranged for Baritone-Saxophone” / Henk Van Twillert

【編集長】私ね、中学校の吹奏楽部でバリサクだったのよ。この組曲をバリサクだけで吹き倒そうなんて、命知らずもいいところだわ。1番を吹いてる途中で救急搬送間違いなしよ。このHenk氏のアルバムもここでポチるわ!ま、まさか…この後にもまだあるとか言うんじゃないでしょうね!?

 

第四章【ギターを持った渡り鳥!?】

【e】はい。まだありますよ。日本が世界に誇るクラシックギタリスト=山下和仁(やましたかずひと)さんも、1990年に全曲をギター用に編曲して弾き倒してアルバムにしました。しかも山下氏、前年の1989年には同じくJ.S.バッハの「無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ全曲」を全曲ギター用に編曲して録音したばかりだったんですよ。

 

J.S.Bach “The Complete Suites For Solo Cello BWV.1007-1012” by Kazuhito Yamashita

J.S.Bach “Sonatas and Partitas for Solo Violin BWV.1001-1006” by Kazuhito Yamashita

【編集長】自分勝手な想像なんだけれど…二年連続でこの偉業を成し遂げるなんて、クリエイティビティのピークだったんでしょうね。もうどんどん湧き出てきちゃったんじゃないかしら。そういえば、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲っていえばパブロ・カザルス(Pablo Casals)氏の全曲録音(1936~39年)がなんといっても有名よね?実は私ね、大きな声では言えないんだけれど…カザルスのこのレコード、あまり好きじゃないの。音がねぇ…なんだか“押入れの中”で鳴っているのを聴いているみたいでイラつくのよ。

最終章【パブロフは→犬、パブロは→カザルス!?】

【e】あー。現役のチェロ奏者が“土管の中から聴こえるような感じで何をやっているのかがよく解らない”と嘆いているのを読んだことがありますよ。カザルス氏のコレはまだテープレコーダーで録っていなかった時代でしょうから、原盤(=実際の演奏から直に刻まれたレコード盤のこと=複製する際の“元データ”となる)が劣化したか紛失したかの理由で、レコード会社にも状態の良いのが残っていないんでしょうね、きっと。

【編集長】デジタルのテクノロジーも21世紀に突入して20年過ぎたんだから、音の悪い音源の修復、何とかならないものかしらねぇ…?

【e】それがですね、復刻版専門の日本の小さなレコード会社=OPUS蔵(オーパスくら)さんが、2003年になんとかしたんですよ!2010年にはそれが最新リマスターされて再発売されたんです!その2010年版の解説書によると、世界中に現存するSP盤の中から各曲一番状態が良いのを厳選して、新品のSPレコードだった時に鳴っていたであろう音色の再現を目指しつつも、ノイズ(レコード特有のチリチリパチパチと鳴る雑音)を除去して“新たな原盤”を完成させたんですって!でね、そのNEWSを聞きつけたウチの会社の社長(新しいオーディオ装置が出ると買わずにはいられないマニア)が、渦中のリマスターCDを早速買いましてね。「いままでのカザルス盤で最高のバージョンだー!」って感動して、コレクションしていた同曲のレコードもCDも、ぜーんぶ捨てちゃったんですって!

バッハ無伴奏チェロ組曲 第1番~第6番/パブロ・カザルス(CD番号:OPUS蔵 OPK 2041/2)

【編集長】うーん、コレもいますぐポチらなきゃね!ここまで面白い情報を貰ったんじゃ、今日は私が自腹で奢るのが筋ってモンよね!〇mazonに注文したCDと飲み代で今夜は予想外の出費になっちゃったわー!(と、なぜか「定期入れ」から〇メックスのゴールドカードを出していた)

【お礼】※以下は、後日に編集長殿から届いたEメールの全文

前略。先日はたいへんお世話になりました!あの後、締め切りの追い込みで軟禁していた変集者は、何とか滑り込み(←セーフではなく完全にoutだったらしい)で入稿致しました。翌朝に浅草駅の2番ホームのベンチで爆睡しているところを、今度は駅員さんに拿捕(だほ)されたとのこと。オフィスに電話がきて“お宅の社員さんですよね!?”と聞かれたのですが、“さぁそんな娘は知りませんね”と答えておきました。あれから毎日、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲ばかり聴いて過ごしています。どの演奏者のアルバムもぜんぶ最高です!また次回取材させて下さいね!(次はワリカンで♡)

-かしこ-

 

最後に、ボブログ音楽食堂「バックナンバー」のご案内でーす!

Vol.1「心が洗われるような、いい音楽ありませんか?」は→コチラから!

Vol.2「踊るROCKに観るROCK、ちょっぴり大人のAOR」は→コチラから!

Vol.3「アラ40/アラ50のお手本としてアニーとクリッシーを拝むべし!」は→コチラから!

Vol.4「アラ40アラ50にオススメしたい! 69歳の女性ロック・シンガー、クリッシー・ハインドの傑作スタンダード集」は→コチラから!

Vol.5「おうちにいてもワイハでアロハ!!の巻」は→コチラから!

easyman

AUTHOR /easyman

ビートルズが来日した年の生まれ。美容師・介護士の免許と実務経験があり、座右の銘は“髪(かみ)のケアから下(しも)のケアまで”。某美容メーカーの教育部門に19年間勤務し、なぜかプロ音楽家との演奏経験あり。一人しかいないのにナンバーワン営業マンと呼ばれる髪書房の特攻隊長。

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