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うねり毛の発生要因を解明

中野製薬株式会社(中野孝哉社長)は、同一人物の直毛とうねり毛の比較から、後天的な「うねり毛(クセ毛)」では複数の毛母細胞が融合し、1つの毛包が形成されていることを明らかにした。この結果は9月19日~22日に開催された「第32回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会2022ロンドン」(以下、IFSCC)において、関西大学との共同研究成果として発表した。

■IFSCCとは?

International Federation of Societies of Cosmetic Chemistsの略であり、全世界で16,000名以上もの化粧品技術者が所属する世界的な学会。学会最大のイベントとして、毎年、各国の化粧品技術者が最新の研究成果を発表・討論する国際学術大会がある。この大会では毎回300件以上の演題が発表され、世界の化粧品業界において非常に大きな影響力を持つイベントとなっている。

毛髪の外観は人の見た目の印象に影響を及ぼす要素の1つであり、なかでも「毛髪のうねり(クセ)」は、先天的な要因だけではなく、加齢などの後天的な要因によっても生じると考えられている。直毛のなかに加齢などの要因で不規則にうねった毛髪が増えると、外見に与える影響は大きく、髪の扱いづらさにも繋がってしまう。しかし、このように後天的にうねった毛髪がどのように発生するのか、そのメカニズムについては解明されていなかった。
そこで、中野製薬株式会社は関西大学と連携し、その発生要因を調べることを目的に同一人物の「直毛」と「うねり毛」を引き抜き、毛根部分の違いについて観察した。その結果、後天的にうねった毛髪では、別々の毛髪になるはずであった毛髪の元となる細胞“毛母細胞”が融合し、1つの毛髪を形成していることが判明した。さらに、「うねり毛」では毛根の形成に関わる物質(タンパク質)の量にも違いが見られることをつきとめ、これらの研究成果をIFSCCで発表した。
今回明らかになった毛母細胞の融合に関して更なる研究を進め、後天的な毛髪のうねりの悩みを解決できるヘアケア商品の開発に繋げていく。

■発表タイトル
「後天的な要因によるうねり毛の抜去毛包組織に見られる形態学的特徴に関する検討」
発表者:中野製薬株式会社 堀部一平、石原良二、中野孝哉
関西大学 化学生命工学部 柯兪如、泉沙良、住吉孝明、長岡康夫

 

■研究の背景
毛髪の外観は、形、色、光学特性など多くの要素によって変化し、その人の見た目の第一印象に大きく影響する。 その中のひとつである「毛髪のうねり(クセ)」は、カール毛のような先天的なうねりの他に、加齢などの後天的な要因によっても生じると考えられていますが、そのメカニズムについてはよく判っていない。そこで、本研究では、同一人物の直毛とうねり毛の毛包組織の形態学的な違いについて検討を行った。

 

■研究の成果
同一人物の頭部から直毛とうねり毛を引き抜き、付着した毛包組織とともに毛髪をパラフィン樹脂に包埋しました。その後、ミクロトームを用いて連続した毛髪横断面の薄切切片を取得し、毛包組織の形態学的特徴の違いについて比較を行った。その結果、うねり毛では複数の毛母細胞が融合し、1つの毛包および毛髪を形成していることが判った(図1、2)。

次に、免疫組織化学染色により、組織の分化に関わる因子の発現を確認したところ、うねり毛の毛包組織(内毛根鞘)では、ケラチンタンパク質の一種である“KRT71”と、タンパク質のジスルフィド結合の形成に関与する“CUTC”の発現が不均一になっていることが判った。これは、1つの毛包内において組織の分化段階が部分的に異なることを示唆しており、複数の毛母細胞が融合し1つの毛包を形成していることを裏付けているものと考える(図3)。

さらに、生体組織の発生・分化・細胞極性などに重要なシグナル伝達経路の一つである“Wntシグナリング経路”に関連する“Wnt5a”の発現量を比較したところ、うねり毛では部分的に減少している様子が捉えられた。一方で、“Wntシグナリング経路”の阻害因子である“DKK1”は、うねり毛で増加していることが判った。すなわち、“Wntシグナリング経路”の不調が毛母細胞の融合に関与しているのではないかと考えられる(図3)。

通常、1つの毛穴からは1本~4本の毛髪が生えており、毛包ユニットと呼ばれる。毛包ユニット内のそれぞれの毛髪は一定の距離を保ち、独立したヘアサイクルに従って生え変わっている。しかし、今回の結果から、何らかの後天的な要因によって毛包ユニット内で毛髪の元となる複数の毛母細胞が近づき、融合することで後天的なうねり毛が生じると考えられる(図4)。
今後は、どのような因子が関連して毛母細胞の融合が起きるのかといった発生機構について検討を行うとともに、後天的なうねり毛の予防につながるヘアケア商品の開発に応用していけるよう、更なる検討を進める。

 

図1 抜去毛包組織の連続横断面の比較(代表例)※赤矢印は毛母細胞の融合が見られる部分

 

 

図2 被験者Aの抜去毛包組織の拡大図

 

図3 免疫組織化学染色(DAB:茶色)による文化関連因子の評価 ※うねり毛では赤矢印の部分でタンパク質発発現に変化が見られる

 

図4 毛母細胞融合による後天的なうねり毛の発生予想模式図

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