古民家の美をサロンの美に
タカラベルモント株式会社(吉川秀隆会長兼社長)タカラベルモントグループは、サロンや医療クリニックのデザインコンペ「第32回 TBCA=Takara Business Creation Awards 2022」を7月22日に開催した。
この「ティービーシーエー=タカラ ビジネス クリエーション アワーズ2022」は、デザイン力・設計力・提案力の向上を目的に、全国のタカラスペースデザインのデザイナーが設計した理容・美容サロン、デンタル・メディカルクリニックの中から、特に優れたものを選出するコンペティション。第32回目の今回は日本を代表するデザイナーや業界ジャーナルも審査に加わり、 業界の動向を捉え今後のコンセプトを探求していく場となっている。
所属デザイナー約110名により昨年4月~今年3月に手掛けられたサロン・クリニック約173作品の中から、 一次審査で61作品を選定。 その中からノミネートされたサロン部門10作品・クリニック部門7作品=計17作品のデザイナーが、コンセプトや設計のポイントなどをプレゼンテーションした。
当日は外部審査員として、島田陽氏((株)タトアーキテクツ 京都市立芸術大学 准教授)、 木下昌大氏((株)キノアーキテクツ 京都工芸繊維大学 准教授)、 中村菜穂子氏・中村昌彦氏(一級建築事務所 こより)を、またファシリテーターとして塩田健一氏((株)商店建築社 月刊商店建築編集部 編集長)を招き厳正に審査。設計デザイン賞・金賞をはじめ各賞が決定した。
【サロン部門 設計デザイン賞 金賞】
サロン部門 設計デザイン賞 金賞に選出されたのは「上目黒美容室」。 住宅街を通り抜ける緑道に面する築50年の木造住宅を、1階美容室、2階ギャラリー兼スタジオへとリノベーションした作品です。オーナーの強い希望もあり、元々の建物が持つ素材の良さを生かしてデザインをしました。「引き算」の考え方で空間の再構成を図り、 残す部分と取り除く部分を慎重に選定。時間を経過した建物の「素朴さ」「確かさ」を引き出し、木造家屋の「力強さ」「濃い陰影」はそのままに、そこに馴染むよう「広がり」や「艶」を加え、「古さ」に寄り添った趣あるサロン空間へと設えました(担当デザイナー談)。
審査員からは「これからの良いモデルケースとなる」「民家から店舗のリノベーションで難しい照明計画をクオリティ高く実現できている」「何度も訪れたくなく空間」と評価された。
なお銀賞には以下の4作品、さらに審査員特別賞として2作品が選出された。
【サロン部門 設計デザイン賞 銀賞】
10年を迎える美容室のスタッフの世代交代を機にリブランディングを図るプロジェクト。 工期が2週間と決められており、さらにシンプル・ミニマルでいてオリジナリティの感じられる空間が求められた。150角のグリッドフレームを挿入することで、整然として落ち着いた空間でありながらも個性的で荒々しさをも飲み込む空間へと「上書き」されるよう意識してデザインした(担当デザイナー談)。
資生堂美容室ブランドの中で、メイクやファッションに感度の高いビューティ探究層をターゲットとしたシンボルサロン。 店販スペースが重要な役割となるため、パーソナルな粧剤販売を可能にするビッグカウンターを配置。カウンセリング、 タッチアップ、化粧品の購入までが可能になる。スタイリッシュな印象を与える黒の塗装を基本に、ミニマルな空間を目指した(担当デザイナー談)。
鎌倉の小町通り沿いにある築60年の伝統的な木造住宅を改装し、店舗兼住宅へ。重厚な柱や梁が整然と組まれたフォルムは残しつつ、真壁和室・洋室・離れのそれぞれの空間を整え、 長押(なげし)で緩やかに繋いだ。オーナーの祖父の代から続いている既存の建物を生かした演出を随所に施し、趣の深い空間に創りあげた(担当デザイナー談)。
縁と縁(エントユカリ)/林 優佑・堀川 塁デザイナー
うなぎの寝床のような細長い空間。奥行き方向を意識させることに焦点を置き、天井に動きをつけることでそれを実現した。店名でもある「縁(えん)と縁(ゆかり)」が繋がっていく様子を曲線の波形で捉え、切妻型の天井ルーバーの頂点が波形の軌跡を辿るような形とした。暖簾で緩やかに仕切った際にもルーバーの変化が空間にリズムを生み、均一化されない空間を実現した(担当デザイナー談)。
【サロン部門 審査員特別賞】
店名“月日”の由来である「お客様と共に時を過ごしていく」というキーワードから、長い月日をかけて水に削られた【石ころ】をモチーフにした。店舗の長手方向に存在する壁やパーテーションは、 塗装やシート貼りで水面を表現。お客様が過ごすセット面やシャンプーブースそれぞれの空間で水の重なりが発生し、 動きを作り出している(担当デザイナー談)。
オーナーが生まれ育った商店街に店舗をオープン。寂しくなってしまった商店街に近所の人が気軽に寄れる場所を作りたいというオーナーの思いから「以前からそこにあったかのよう」だが「現代的」で「個性的」な空間が求められた。そこで、街と関係する色々な使い方ができるよう、自由度が高く、個性を持つ空間をデザイン。ただの一室空間ではなく、奥行きや広がり、変化やリズムを感じられるよう設計した(担当デザイナー談)。
審査員からは「面白いデザインがたくさんあり自分たちの刺激にもなる」「若い人たちがデザインを楽しんでいて嬉しい」「デザイナー一人一人がかなりの案件数を抱えていながらクオリティが高く、ストーリー性も感じられる。デザイナーもすごいがそれを支えるチーム全体が素晴らしい」などのコメントが寄せられた。
同コンペの受賞作品やエントリー作品は、同社ホームページの他、 ショールームや展示会・営業ツール等でも紹介していく。
【クリニック部門 設計デザイン賞 金賞】
【クリニック部門 設計デザイン賞 銀賞】
【クリニック部門 審査員特別賞】