女性が永く活躍できる業界へ
株式会社ガモウ(蒲生典子社長)は、女性美容師の持続的な活躍を応援するイベント『MUSE project』を5月24日にガモウ青山スタジオ(東京都港区)にて開催した。
「すべての女性美容師が人生における問題や転機が訪れた時、前に進むヒントを提供し、背中を押し、時にひっぱる存在になる」という思いのもと、2019年春に立ち上がった同プロジェクトは主催の(株)ガモウに資生堂プロフェッショナル(株)が協力して実施。女性美容師のキャリアに焦点をあて、「女性美容師にとっての美容業界」をより良くするため活動している。
この背景には美容師の男女比率は3:1と女性が多いにも関わらず女性美容師はライフステージ等の変化に強く影響を受け、就業を継続する割合が低いという実態がある。そこで、本イベントは、業界の現状理解と課題解決につながる新たな気づきを得ることをねらいとする。
講師には一番合戦彩さん(Uné GARDEN/東京・恵比寿)、 SAKURAさん(Cocoon/東京・表参道)の気鋭女性スタイリスト2名、さらには男性オーナーの声も反映させるべく中井宏昭さん(bianca,padome/神奈川県鎌倉市)を招いた。三者三様の視点から、2部構成でトークショーを行った。
会場には約50名の美容師が集まった。
挨拶する蒲生典子社長(左)と朝妻久恵社長(資生堂プロフェッショナル(株))
■トークショー1/女性スタイリストの視点
「女性美容師が長く美容師として活躍するには?」という質問に対し、「自分にとってより良い環境を求める行動をすること。自分は今後〇〇したい!という思いを、上司やオーナーに直接相談する」と語った一番合戦さん。5月7日にオープンしたばかりのサロン、Unè GARDENの店長を務める。
「お客さまにとっても私たちにとっても、一番居心地の良いサロンをつくりたくて、何年もかけて上司と話し合いを重ねた。その結果、自分が理想とするサロンが完成した。今、後輩たちが私に直接相談しやすい環境を整えるよう心がけている。女性管理職という立場にいるからこそ、女性が長く働ける風土づくりに励みたい」と自らの経験と行動に基づき、新サロンへの意気込みを述べた。
一方、SAKURAさんは「女性美容師に伝えたいことは?」という質問に対し、「女性はライフステージの悩みを常に抱えている。追い詰められていると、自分を客観視できない。そういう時は1人で悩まず声を挙げるべき」と返答。
24歳の頃、当時働いていた環境と思い描いていた自分に相違があり、一時的に業界から去った過去を交えて話した。
「自分が何をどうしたいのか。何に困っているのか。自分だけで解決策を模索するのではなく、周りに頼る。今の私という存在があるのは、当時悩んでいた期間に頼れる人(恩師)に出会えたから。美容師として今日まで歩めたのは、この出会いがあったから」と縁や恩の大切さを説いた。
■トークショー2/男性オーナーの視点
脱ジェンダー問題(性別格差/労働格差/賃金格差/※えるぼし認定/女性活躍推進法施行後の業界予想)の具体例を提示しながら、中井さんが社長を務める女性活躍サロンbianca、padmeの戦略を紹介した。。同サロンは顧客の9割が女性で、1人あたり15,000円を超える高単価サロンとのこと。同氏は「スタッフは女性のみで子育てや介護をしているケースも多く、顧客にも理解を求めて誰もが働きやすい環境を整えてきた」と明かした。
※女性活躍推進法に基づき、女性の活躍を推進している企業が取得できる制度
昔から、この業界は「女性が輝く業界」と言われている。一般的に美容室の顧客は女性が多い以上、生涯顧客づくりは男性スタイリストよりも女性スタイリストに分がある。
スタイリスト目線や経営者目線における課題は山積だが。「女性が長期にわたり活躍できる業界文化」をつくる努力は業界発展につながるだろう。