その１秒を、もっと濃く もっと楽しく

女性向けファッション雑誌やビューティ誌、SNSなどで注目される「骨格診断」。

今はファッション通販サイトでも「『骨格ストレート』の人はベルトを使わずに着てください」などと、顧客が自身の骨格タイプを知っている前提で商品を説明しているサイトも見られるようになりました。

以前ボブログでは、美容師さん向けのセミナーについて記事にしていました↓

▶【セミナーレポ】美容師さん向けの“骨格診断セミナー”を受けてみた！

そのセミナー講師で、骨格骨格診断アナリスト認定協会認定講師である上野由可里さんより「メニュー化して成功している美容室オーナーさんがいます★」とご紹介いただき、取材することに！

「骨格診断って注目されているのはわかるけど、カウンセリングに役立つだけでマネタイズが難しいでしょ？」

「そんなお勉強をしなくても、美容師なんだからお客さまに似合うものがわかるセンスはある」

そう思って敬遠している人にこそ！ ぜひ読んでほしい内容です！

骨格診断とは何か？のおさらい

上記のセミナー受講記事を引用して、改めて説明します。

人の体には骨や筋肉・脂肪のつき方、肌のハリ感など「質感」と「ライン」の特長があります。これらを“診断”してタイプを知り、その特長を踏まえて全身バランスを最もきれいにみせてくれるコーディネートができるようになるための理論

この、人の体の特長を「ストレート」「ウェーブ」「ナチュラル」と大まかに3タイプに分け、全身バランスが良く見えるシルエットや柄、アクセサリーなどのコーディネートの傾向を体系化した理論になります。

路地裏の繁盛店！「あそこに行けばおしゃれになれる」と評判でファン客が増加

骨格診断をメニュー化し、集客とリピートともに成功しているサロンは、Cheer［チアー／千葉県旭市］。行ってみると……

こんな感じで、まず道路沿いには理美容室が。

Cheerはその裏口にあります。

Cheerのオーナーは林江美さん。理美容師のご主人とのご結婚を機に、サロンワークを手伝うために美容師免許を取得。自分のお客さまが少しずつ増えていく中、自分の顧客だけを独立して担当できる空間を持ちたいという思いから、理美容室の裏に女性専用サロンをオープンしました。

これは、案内してもらわないと辿り着けないような立地ですね！

通りがかった一見さんが来るような場所ではありませんよね。最初はお客さまは10人ほどしかいなくて……。今は新規のお客さまの受付をお断りするまでになりました。

集客方法は紹介のみですか？

ほとんどが紹介です。それと、ブログやFacebookでの発信に取り組んでいました。文字で考え方を発信することで、共感した方が見つけてくれて来店してくださるケースもありました。その2つをコツコツ続けていました。

骨格診断を取り入れるようになったのは、やはり集客のためですか？

結果的に集客にもつながりましたが、それが目的ではありませんでした。興味を持ったのは約5年前。すでにお客さまはたくさん来ていただいていて、顧客満足度アップのための知識として興味を持ちました。ちょうど上野さんもブログをやられていて、そのブログで「骨格診断」を知りました。すぐに直接連絡をして、セミナーを受講。2019年6月には骨格診断ファッションアナリストの資格を取りました。これはの人の骨格・体型に似合う服などの素材や柄、色を提案アドバイスできる資格です。

即断即決だったんですね。なぜ学ぼうと思われたのでしょうか。

それまでも、お客さまにファッションの相談をされたら感覚で答えることはあったんです。その中で、似合うものと似合わないものには理論があるはずだと思って調べていました。
“似合わない理由”を感覚でなく言葉で説明できると、もっと提案が深まるはず。今の自分に絶対に必要な知識だと思ったんです。

顧客の「もっと知りたい」からメニュー化に着手

そこから、どのようにお客さまに落とし込んでいったのでしょうか。

まず、セミナーで教わったときに「診断ミスがある」というのを聞いていたんです。そこで、すべてのお客さまに練習もかねて、モニター的に診断をさせてもらいました。美容師のカットモデルみたいな感じで、“診断モデル”になってもらいました。

なるほど、最初は無料で顧客に診断をしてさしあげたのですね。

はい。すべてを教えるのではなく、タイプを診断させてもらって概要を説明し、もっと知りたければサロンに置いている本を読んでもらう形でした。
すると、もっと知りたいというお客さまが出てきて。閑散時であれば話せますが、忙しいときは業務の合間にすべてご説明することはできない。そこで、これはメニュー化してしまおうと思ったんです。

お客さまのニーズから生まれたメニューだったんですね。どんなメニューなのでしょうか。

骨格診断セミナー1時間半で1万6,000円で組みました。骨格診断とは何かから始まって、基本的な考え方、診断、コーディネートの組み方までを教えます。
美容室の単価に照らせば高額に感じますが、一生使える知識を学べる一般的なセミナーとしては妥当か、安いくらいの値段。一度理論と自分のタイプを知って、そこからは自力でコーディネートできるようになる方もいれば、シーズンごとにコーディネートレッスンを希望する方もいます。
また、グループ受講を希望される場合はグループ割引があります。ご友人と一緒に受講される方もいますよ。

一生モノの専門知識のセミナーだと思うと安いですね。営業時間を使って対価をいただいて説明できることで、サロンワーク中の片手間に感覚でアドバイスするより内容も深まりそう。コーディネートレッスンも有料ですか？

はい。一度1時間半のセミナーを受けた方向けのコーディネートレッスンは、10分1,000円です。アウターや靴など、シーズンごとに買い足したいけど似合うかわからないもののお買い物相談を受けたり、次のシーズンのアイテムを持ち込んでもらってコーディネートを組んだり、着方をアドバイスしたりします。

パーソナルスタイリストのようですね。ここからは、実際に「骨格診断セミナー（1時間半／1万6,000円）」の流れを再現していただきます。

美容師が提供する骨格診断セミナー

①骨格診断とは何かを説明する

ポイントは、その人のタイプだけでなく概論をきちんと説明して、理論への理解を深めてもらうことです。ですので、本人のタイプ以外の2タイプも簡単に説明します。
というのも、骨格タイプはあくまでめやすで「それ以外絶対に着てはいけない」というわけではありません。自分以外のタイプを知ることで、着たいアイテムが似合わなかった場合、そのアイテムはどんな特長の人向けなのかが頭に入っていれば、着こなしの応用ができます。

骨格タイプを診断する

骨格タイプの診断は骨に対する、脂肪や筋肉のバランスを見ます。正確に診断するために、実際に体に触れさせてもらいながら進めていきます。

タイプがわかったら、タイプ別のテキストをお渡しして具体的なコーディネートレッスンに移ります。

オーソドックスなアイテムで「似合わない」を実感し、理由を理解

デニムジャケットやTシャツ、トレンチコートなど、オーソドックスなアイテムは3種類お店に用意しています。体に当ててみたり、実際に着てもらいながら似合うものと似合わないものを実感してもらいます。

鏡の前で当てながら説明する

この形はジャストサイズで、ストレート＆ナチュラル向き。

最も似合う形と着方は垢ぬけて見える。

アクセサリーにも、骨格タイプによって似合うものとそうでないものがあります。時計やネックレスなどを数種類用意し、実際につけてもらうなどして説明します。

時計は特に骨格タイプが影響するアイテム。

お客さまのアイテムでコーディネートや着方をレクチャーする

手持ちのアイテムの「似合わないもの」「気に入っているもの」を聞きながら、組み合わせを考えていきます。

お客さま私物の「苦手」なアイテム

「骨格ナチュラルの人は長くて大きいシルエットが似合う」とタックのロングスカートを提案する江美さん

「ナチュラルで背が高いので、長いもの×長いものも似合う」

得意なアイテム同士を組み合わせたコーデ例

同じアイテムでも、着方1つで変わります。たとえば……

これだととても窮屈ですよね。

こうすると全然違いますよね

本当ですね！ 同じアイテムでも着方1つで変わるのはおもしろい。シーズンごとのレッスンを受ける人は多いですか？

はい。こういった着方は、一度セミナーを受けて即座に理解できる人は一回きりで良いと思います。ですが、継続的にレクチャーを求める方もいますので、ニーズは感じています。好評ですよ！

地方サロンほど「骨格診断」はニーズがあるし、差別化できる武器になると思う

コーディネートレッスンの様子は大変興味深かったです。ファッションの提案を美容室ですることにハードルを感じる美容師さんもいると思うのですが、成功の秘訣はどこにあったと思われますか。

「田舎でコーディネートレッスンなんて」と思われるかもしれませんが、逆に田舎だからこそニーズがあると思っています。都心にはたくさんのショップがあり、それこそこういったセミナーも身近なモノになってきています。ですが、地方は買い物するところがそもそも少ないし、教えてくれる人がいません。
「おしゃれになりたいけど、何から手を付けていいかわからない」という女性はたくさんいるはずです。聞くところが身近じゃないから、あきらめてしまって「ファッションに興味がないように見える」だけだと思うんです。

ファッション初心者向けに用語をまとめたスクラップも用意。

確かに。今はネット通販があるから、地方でも都心と同じようにモノは手に入るようになりましたが、自分に何が似合うのか教えてくれる機会は少ないかもしれません。

そうなんです。髪の仕上がりで「どこの美容室に行っているの」と紹介してもらって集客につながるように、お客さまがトータルで垢ぬけて素敵になってくだされば、そのコミュニティで話題になるはずですしね。
とにかく、髪でも服でもなんでもいいから自店のお客さまが素敵になることが美容師としてうれしいですし、それが信頼関係につながり、お客さまが広告塔になってくださる。骨格診断は、地方の、田舎のサロンほどメニュー化すると成功すると思いますね。

同じモデルケースで他のエリアも成功できるということですね。最後に、骨格診断を勉強してみてヘアデザインに関しては影響があったでしょうか。

私の場合は骨格診断セミナーメニューの時は、髪型の話は一切しないようにしていますね。髪ももちろん骨格診断理論に基づく似合わせがあるのですが、髪は似合わせだけでなく、その時の気分だったりを表現するという役割もあると思うからです。
また、髪の話を入れなければ、アシスタントに担当させられるメニューにすることもできるという展望もあったり。
髪はプロの私たちに任せてもらって、気分に寄り添いながら一緒につくっていく。骨格診断では、自分で着る服やメイクの知識を提供することで、毎日いつでも素敵でいてもらいたいというのが目的です。

いかがでしたでしょうか？

モノも情報もオンラインで手軽に手に入るからこそ、対面の美容室の価値はより深いパーソナルな提案がいかにできるかがカギになってくると思います。

その一手としてのファッションへのアプローチ。メニュー化の成功例を参考に、自店のお客さまをもっと素敵にできるヒントになれば幸いです♪

江美さん＆お客さま、ご協力ありがとうございました。