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【リアル悩み】社内最短デビュー記録美容師ってどんな人?髪担当してもらってみた。【分析】

(11月某日、昼下がり。♪〜LINEの着信音)

Nさん〜!Nさんにお願いしたいことがあるのですが…

この美女は、ジャパンビューティーホスピタリティ(有)ドゥエドゥの藤原花妃さん。小社刊『美容室の現場力』の著者。美容室の接遇から材料・財務まですべてを知り尽くし、年間1000人以上の美容室新入社員の新人教育を担当するサロンのエキスパートだ。そんな人のお願いならお安い御用である。

東京・表参道の美容室K-twoさんで、社内最速デビューをした人がいるんです。とても頑張っているんですけど、デビューして1年経ち、固定比率・リピートの面で苦戦しておられるとご相談があって。
それで、ぜひNさんがお客さまとしてサロンワークを体験して、感想を聞かせてほしいんです!

……潜入捜査の依頼だった。お客さまも美容学生もどんどん減る今、生産性アップのための早期デビューに着手する経営者は多い。だが、近頃当ブログで紹介した労務問題の記事の取材で、早期デビューで早い自立をうながす分、教育に苦戦する事例が増えていると聞いた。有名サロンのリアルな早期デビュー教育には、ヒントが多そうだ。

また、単純に早期デビュースタイリストのサロンワークってどんなものだろうと興味を持った。技術職である美容業で、大切な“修行“をショートカットしてレベルやクオリティは落ちないのだろうか?

早期デビュー美容師の教育のヒントとリアルな実情を知るために、そして近頃編集Nが個人的にシティーハンターブーム再燃中なせいで美女の依頼を断れず、デビュー1年の美容師に髪を切ってもらうことになった。

 

サロンワーク体験にあたってチェックするポイントは、電話予約から退店までの日頃講習で指導しているポイントがびっしり。冴子に難題を振られた冴羽遼の気分を少し味わう。

 

ターゲットは入社4年目、2年4カ月デビューの女性美容師!

尾倉佳奈[おぐら・かな]さん
1997年11月6日生まれ。福岡出身。福岡美容専門学校卒業後、新卒採用でK-two入社。現在4年目。2020年7月に同社史上最速デビューを果たした。

予約サイトで見つけたテイのガチ潜入取材なので、写真での追跡報告はできないため、まずサロンワーク体験は印象に残った点と感想を文章ベースでお送りする。

ロッカーに荷物を預けると、満面の笑みの尾倉さんが出迎えてくれた。

はじめまして!担当いたします尾倉佳奈です。本日は指名いただきありがとうございます!

ワンコのような人懐っこさで、面食らう。シッポの幻覚が見えるほどだ。早くデビューして経験も浅く、売上伸長に対して発破をかけられているともう少し萎縮しそうなものだが、堂々と目の前のお客(私)を歓迎することに集中できている印象だった。一瞬で「新規客としての不安」が吹っ飛んでしまう好印象ぶり。

カウンセリングを経て、全体のシルエットを整えるカットとワンプロセスのカラーをオーダーし、1時間40分で退店した。以下はサロンワークを体験しての感想レポートの抜粋である。

接遇 優雅で落ち着いた所作とまでは言えないが、研修で習った接遇のポイントは完璧。何よりお出迎えの第一印象が良い。一瞬で好きになる。

 

カウンセリング 共感型というよりは、問題を聞き出して解決するやり方。特にカラーの褪色の悩みに対して、レシピでどう解決するかという説明が上手だった

 

技術 カラーは想像以上の腕前! ハイライトやローライト、ポイントで塩基性カラーを使用したこともある複雑な履歴ながら、履歴も活かした綺麗なモーブベージュを提案してくれた。カットはもう一歩。緊張感と自信のなさが伝わってきてしまった。だが「左右のシルエットを整えたいのでこちらをもう少し量を調整しますね」と説明をしながらカットしてくれたのは安心感があった。

後日ネタバラシ! サロンワーク楽しい? どんなことを悩んでる? 色々聞いてみました

K-two 薄井社長からのネタバラシの後、本人に再度直撃! 最短デビューを果たすことができたヒミツや、デビューしてからのやりがい、悩みなどをあれこれ聞いてみた。

隠していてすみません。改めて本日はよろしくお願いします! ちょっと変だなと思っていましたか?
編集N
編集N
調査だとは全く気づかなかったんですけど、予約サイトみて電話…というのが珍しいので緊張はしていました。レポートを拝読したら、緊張したのがバレていて恥ずかしかった〜(笑)
まず最初に月間売上と入客数はどのくらいか聞いてもいいですか?
編集N
編集N
技術売上でおおよそ60〜70万円を行ったり来たりしています。
指名数は月50〜60人くらいです
アシスタントは使わずですよね? シャンプーもやってくれましたもんね。入社4年目で客単価1万円は十分好成績だと思いますけどね
編集N
編集N
ありがとうございます!
弊社は小顔カットをはじめとした高い技術がウリのサロンなので、技術売上と技術単価をあげたいんです。頑張らないと!

朝晩毎日のレッスンと先輩へ先回りして質問攻め! 早期デビューをかなえた負けず嫌いな性格

社内最短デビューができた理由を探ってみた。どんな練習をした?

毎日営業前後、朝晩のレッスンを毎日必ずやると決めて取り組みました。誰よりも早くきて、誰よりも遅く帰るということを続けて。
また、チェックのときにわからないことがないように、先輩に質問もしました。チェックしてくださる先輩のスタイルの個性に合わせた切り方を研究して寄せるというような対策もしていました

ワンコのような印象に反してずいぶん策士! どうしてそんなに頑張った? 早くデビューしたかった理由は?

怒られるのが嫌だったんです(笑)
4人姉妹の次女なので、怒られないように立ち回るのは得意なタイプ。言われたことをやるのも得意なので、早くデビューしたい!というモチベーションが生まれてからは苦になりませんでした

モチベーションがクリアになれば努力を厭わないというのは、新人世代のリアルな傾向なのかも。「怒られ慣れていない」とか「労働条件を気にしてすすんで練習をしない」とか、ネガティブな捉え方をせず、モチベーションを与え自発的に目標を見据えるように導くことが早期デビューを叶える秘密のようだ。

勉強はデビューしてからの方が楽しい! カラーが好きだから毛髪科学も苦手意識はない

早くデビューしたということは、それだけアシスタントとしての接客OJTが少ないということになる。その点の不安はなかったのだろうか?

最初は不安はありました。ですが、経験していくうちにやりがいの方が大きくなって。勉強や練習もデビューのためのカリキュラムより、お客さまのために頑張る方が楽しいです

それは素敵! 得意な技術はやっぱりカラー?

はい。カリキュラムのときからカラーは楽しかったですが、スタイリストになるとお客さまに提案したい色が次々にイメージできるようになるので、薬剤の情報や知識をすごくチェックするようになりましたね

予約サイトでウリを“透明感カラー“と打ち出している尾倉さん。実際に施術してもらって、十分「武器」といえるクオリティだと実感した。太鼓判!

悩みや希望を全部聞きだすカウンセリングを意識。でも、同世代のお客さまには響いていないかも……?

カラーの理論の勉強をしっかりしているからカウンセリングも堂々としているのだと判明。カウンセリングで気をつけていることは?

カウンセリングは、マネージャーの塚本(繁さん。前髪番長)によるスタイリスト向け講習で教わったことを実践しています。

お客さまが本音を言いやすい環境を作るために、お話しされたそうなことを一旦全部聞き出してからご説明することを心がけています。質問をたくさんすることがコツだと思っています

なるほど、教わったことを着実に実践しているから安定感があったのか……。豊富な知識×話し方の技術=若くても地に足のついた提案が可能という公式が生まれた。これが経験が浅いにもかかわらず高単価が叶う秘密のようだ。

そういうカウンセリングは、編集Nくらいのひと回り以上年上の大人対応も安心して任せられそうな印象がある。

え、本当ですか? 私は大人の方から見ると頼りないと思われているのかなと思っていました。「若いでしょ?」と言われることもあって。技術で補わなければなとばかり

ということは、顧客層はほとんど同世代? 30代以上は少ない?

はい。8割が20代です

同世代や自分より若いお客さま、考えて考えて提案した内容聞き入れてくれるのだろうか? たとえば次回提案とか、ホームケアとか。

そう言われてみれば、響いていないかも……
ダメージなどのお悩みを聞き出して精一杯提案してもリピートせず、しばらく経ってダメージがもっと進行してから『治してください』とご来店になることがよくあります

10〜20代の頃は、悩みよりも自分のこだわりやファッション性の方が優先するものだし、ある意味仕方のないことかもしれない。

尾倉さんの顧客構成比は、ここ半年くらいで新規比率を固定比率が上回ってきたとのこと。わかりやすいウリでバズワードを使って集客したり、同世代ならではのノリやセンスで共感して提案したりする提案に比べたら、同世代の支持は得にくいのかもしれない。だが、着実にカウンセリングの価値を感じてくれるファンが増えているといえる。

実は店販が得意ということが判明! カウンセリングが得意だからオススメも抵抗なし

客単価が高いようだが、プラスメニューの提案も得意なのだろうか?

予約サイトのセットメニューで来店される方がほとんどなので、プラスメニュー提案の機会はトリートメントくらいですが、きっちりご提案するようにしています。商品もきちんとご紹介しますし

数字を聞いたところ、客単価は1万2000円、技術単価は1万円とのこと。販売率にして17%なので、コンスタントに提案ができているようだ。「物売り」が苦手な美容師は多いのが定石だが、抵抗はないのだろうか?

4〜5人に1人はお話しすれば興味を持ってくださるし、怖さも抵抗もないですね。断られるかも…とかではなく、全員にきっちり提案するようにしています。
今はカラーブームということもあり、同世代でもヘアケア剤やドライヤーなどにお金をかける方は多いから、一才抵抗ないです

まさに20代ならではの頼もしさ! 新人スタッフは経験は未熟だが、裏を返せば一番つい最近まで顧客だった人。その分、サロンの中で誰よりも顧客目線を覚えているということになる。

さらに、彼女ら20代は情報化社会ネイティブ。感性で当たって砕けるサロンワークより、教えられて考えて実践するPDCAのサロンワークで伸びていくというのが、早期デビュー時代の成長曲線なのかもしれない。

そんな強みがあるなら、早くデビューしてもらうと強い戦力になりそうだ。ついつい固まりがちな古い美容の現場の固定観念や苦手意識を払拭する、新世代のサロンワークという印象を持った。

結論:早期デビューでもサロンワークは十分高品質! 本人に合った歩幅と戦略で育てる教育へ

最後に、尾倉さんの目標を聞いてみた。

もっとたくさん指名してもらって、リピートしてもらえるようになるのが課題です。そのために、今はカットのカウンセリングを頑張っているところです!
技術売上で月間100万円に到達するのが今一番の目標なので、今回潜入してもらったアドバイスも踏まえて頑張っていきたいと思います

早期デビュースタイリストのサロンワークを顧客として体験して、クオリティと安定感は想像以上の高レベルだった。これはもちろん、会社の充実した教育制度と、それを確実に自分のものにしている尾倉さんの努力の成果に他ならない。どの美容室でも一律に長い修行が不要ということではない。

だが、今の20代の価値観や性質、顧客のニーズを鑑みれば、教育の仕組みを整えて本人のモチベーションを創起すれば、早期デビューさせてもサロンワークの質は落ちないと確信と希望を持ったーー

これにて潜入調査は終了。任務は完了したが、今後の尾倉さんの目標進捗についてはリサーチ続行し、早期デビュースタイリストが一人前、そして一流の美容師になっていく経過を観察していきたい。

ななしま

AUTHOR /ななしま

月刊NEXT LEADER編集部→月刊BOB編集部→書籍編集部。好きなものは宝塚と蛙亭と、赤井秀一です。

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